邦銀の事業環境の先行きは不透明《ムーディーズの業界分析》
2つ目は、邦銀の低収益性である。過去10年以上、企業の借入比率は減少を続け、ゼロ金利環境はほぼ一貫して継続し、また貸し出し競争が各行の利ザヤを圧迫してきた。その結果として与信費用控除前の利益の水準、すなわち与信費用を吸収する期間利益額もまた大きくはなかった。近い将来において、このような傾向が反転することは見通しづらい。
他方、今後1年半から2年程度の時間軸で、ポジティブにとらえうる面もいくつかある。近年において信用バブルが生じなかったこと、そして中小企業とは対照的に、大企業がそれまでの財務体質の改善の結果として良好な信用力を保っていることは、邦銀の資産の質の劣化に一定の歯止めをかけるであろう。また、3メガ銀行グループが金融危機後にそれぞれ大規模な増資を行う等、邦銀の資本は質量ともに改善している点もプラスに考慮できる。
それに加えて、流動性は邦銀の強みの1つとなっている。強固なコア預金ベース、多額の流動資産(国債等)、そして預金者やカウンターパーティ(取引の相手方)からの多大な信認がその背景にある。
このような強みは、政府による制度的、恒久的な資本増強メカニズムの存在と、銀行セクターへの政府のサポート提供に対する強い意志により補完されている。そして、過去の資本増強は結果的にその多くが返済されているため、公的資金による資本増強に対して明確な反対の声が上がっているわけでもない。
このようなことを考えたとき、特に当社が格付け対象としている邦銀は、国内外で直面する課題に対処するしうるだけの資本が十分備わっていると見ている。
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