邦銀の事業環境の先行きは不透明《ムーディーズの業界分析》


金融機関グループ アナリスト
梶 恭輔

2008年後半以降、日本の銀行セクターに対するムーディーズの見通しは「ネガティブ」と、邦銀の事業環境の先行きが不透明なことが示唆されている。これは、以下の要因を反映したものである。
 (1)構造的要因に起因する厳しい営業環境の継続が見込まれること、
 (2)東日本大震災ならびに先行き不透明な世界経済が、各行の資産の質にさらなる下方圧力を与えること、
 (3)結果として各行の低収益性が継続し、資本増強に時間がかかりうること。

当社は11年の日本経済の成長率をマイナス0.5%程度の成長と見ているが、12年には2.5%程度プラス成長すると見ている。ただ、現在の復興投資が借り入れ需要の増大にどの程度寄与するのかは見えてこない。大震災の前、ゼロ金利環境が継続する中でも、経済の低迷により借り入れ需要は弱含みで推移していた。

こうした状況を背景に、邦銀は2つの課題を抱えている。

1つ目は、邦銀全体の貸出金の約4割に相当する中小企業向け貸出金の質の劣化懸念である。中小企業向け与信は、すでに国内経済の低迷により厳しい環境にあったが、世界経済の低迷ならびに円高の進展により、いっそう厳しい状況となっている。そのような中小企業は、大企業のように国際展開を行うことで影響を緩和することができない。

金融危機以降、中小企業の営業環境は厳しさを増しているものの、過去2年間、そのデフォルト率は低下を続けている。これは、主に各種政策が奏功した結果としてとらえることができよう。しかしながら、今後1~2年の時間軸では政策効果が剥落する中、不良債権比率が上昇する可能性がある。

図表:中小企業デフォルト率の推移

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