内閣府がひた隠す2020年度収支のカラクリ 赤字額9.4兆円から6.2兆円に「急減」のナゼ

✎ 1〜 ✎ 35 ✎ 36 ✎ 37 ✎ 最新
拡大
縮小

そこで、筆者の推計を基に、この収入と支出が、2月の試算と7月の試算でどう変化したかを示そう。

「中長期試算」に掲載されている国の税収等と地方の税収等を合計して見ると、2020年度の税収等は、2月試算で167.2兆円、7月試算で168.6兆円となって、1.4兆円増加していることがわかる(丸目の誤差あり)。

他方、歳出側である。「中長期試算」に掲載されている国の歳出と地方の歳出を合計すると、国から地方への補助金等がダブルカウントになってしまうので、その重複を除かなければならない。

本来、内閣府がこれを国民に開示していれば、筆者の推計は不要なのだが、開示していないため、筆者が推計した金額で言うと、2020年度における国と地方の重複を除く支出(基礎的財政収支対象経費)は、2月試算よりも7月試算の方が1.8兆円減っている。

「税収等の増加1.4兆円+歳出抑制1.8兆円」という目論見

つまり、2020年度の基礎的財政収支が、2月試算よりも7月試算で3.2兆円「改善」した要因は、1.4兆円が税収等の増加によるもので、1.8兆円が歳出抑制によるものであるといえる。このことから、税収増よりも歳出抑制による効果の方が大きいことがわかる。

税収等の増加は、当然ながら、2014年度の決算における税収増の情報も加味している。しかし、今年6月に経済財政諮問会議で取り沙汰された税収弾性値については、今回の7月試算では、2016~2020年度の値は平均でみれば1程度となっており、諮問会議での「1.2~1.3に引き上げる」との見方を退けた。

残された課題は、2020年度までに平均して3.3%もの名目経済成長率を実現できなければ、これだけの税収は期待できないので、それが「捕らぬ狸の皮算用」にならないようにできるか否か、である。

次ページ結局、7月の試算でわかったこととは?
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT