そして、今回の7月改訂では、2020年度の基礎的財政収支は、今後5年間で名目成長率が平均3.3%と想定する経済再生ケースで、6.2兆円の赤字との試算結果となった。
今年2月の試算で9.4兆円だった赤字が、今回の7月の試算で6.2兆円となった。3.2兆円の「改善」である。この半年足らずで、何がそうさせたのか。「9.4兆円もの収支改善が必要」と血眼になって議論していたはずだが実際にはそんなに躍起になる必要はなく、そもそも愚かだったというのだろうか。
「3.2兆円改善」のカラクリとは?
その「改善」のカラクリを説明しよう。
今年2月の試算と7月の試算は、同様の試算方法だが、試算上加味できる情報は、7月試算の方が当然ながら新しい。2月段階では、2014年度の決算がまだ出ていない。7月には2014年度の決算の概要がわかる。
そういえば、2014年度の決算では、法人税や所得税の収入が大きく伸びて、予算段階よりも大幅な税収増が決算段階で生じている。この情報を加味すれば、先の3.2兆円はほとんどがこの税収増を反映したものではないか・・・。
それはどうやら間違いである。
結論から言うと、2020年度の基礎的財政収支の見通しが3.2兆円改善したのは、税の自然増収によるものだけではなく、むしろその影響は相対的に小さく、歳出改革による効果の方が大きい。
では、3.2兆円の差異が何によって生じたかを分析しよう。「中長期試算」には、収支の金額は載っている。しかし、収支は収入と支出の差額であるはずだが、元となる収入と支出の試算結果は掲載されていない。筆者もある機会に、内閣府に対してその両者を公表するよう要請したが、依然として実現していない(内閣府は公表すべきである)。
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