追加利上げでも変わらない住宅ローンの超低金利 優遇幅の拡大でなお続く「新規顧客の獲得競争」

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住宅ローンの変動金利は、短期プライムレート(短プラ)やTIBORなどの基準金利に連動する。だが、基準金利がそのまま借り入れ時に反映されるわけではない。個人の信用力などに応じて基準金利から一定の優遇幅(引き下げ幅)を引いた「適用金利」が、実際の借り入れ金利となる。優遇幅は完済時まで原則維持されるため、基準金利が上下しない限り、適用金利は変わらない。

低金利環境が長引く中、各行は基準金利を据え置きつつ、優遇幅を拡大して適用金利を低くすることで競争を繰り広げてきた。基準金利と適用金利の乖離が2%以上に及ぶ銀行も少なくない。

住宅ローンの基準金利と適用金利

「基準」と「適用」どちらを上げる?

久方ぶりの利上げ局面で浮上しているのが、基準金利と適用金利のどちらを引き上げるかという問題だ。

各行には、基準金利のみ、適用金利のみ、両方引き上げる、という3つの選択肢が存在する。基準金利のみを引き上げたのは住信SBIネット銀行。5月に短プラを0.1%引き上げ、10月1日からさらに0.2%引き上げることを8月1日に公表した。10月1日は変動金利の借入利率が改定される判定日のため、既存顧客の適用金利は25年1月の返済時から計0.3%上昇する。

一方で、新規顧客の適用金利(変動型)は8月時点で0.298%、頭金を入れない場合でも0.32%と、過去の水準と変わらない。基準金利の上昇を優遇幅の拡大で相殺させ、適用金利を据え置いたのだ。既存顧客からの利息収入を増やしつつ、新規顧客の適用金利を抑えて競争力を保った格好だ。同様の対応はイオン銀行でも見られる。

対照的なのがauじぶん銀行。基準金利を据え置く一方、7月からは新規顧客向けの優遇幅を縮小させ、適用金利を従前より0.1%高い0.329%とした。既存顧客の利払いは変わらない一方で、新規顧客の利払いは増す。

同行の担当者は「総合的判断で決めた」と答えるが、競合の銀行幹部からはauじぶん銀行特有の事情を指摘する。

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