病院が「患者さま」と呼ぶのをやめ始めた深い事情 横行する「カスハラ」看護師の手を舐める患者も
特筆すべきは、医師法19条1項の「診療に従事する医師は、診察治療の求があった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」とする、いわゆる“応召義務”にまで踏み込んだことだ。
医療の現場で応召義務の話が出ると、診療を拒否する“正当な事由”が焦点になる。
ペイシェントハラスメントによる診療拒否について、同病院局は厚労省通知などを参考にしたうえで、「患者への診療に緊急性がなく、代替する病院などが存在する限り、拒否された(患者)側の法律上保護されるべき何らかの権利、または利益が侵害されるわけではない」として、信頼関係の喪失は診療拒否の正当事由となり得るとの考えを示している。
改めて問われる“患者の権利と責任”
カスハラと、患者の権利――。この両方をどう考えていくべきか。
長野県佐久市の佐久総合病院の玄関の患者からよく見える場所に、“患者さんの権利と責任”と題した横長の看板がある。
40年以上前の1983年(昭和58年)1月に掲げられ、今にいたる。このように患者の権利と責任(責務)を表明する動きは、その後、全国に広がっていった。
そこには、患者の権利として、▽適切な治療を受ける権利▽人格を尊重される権利▽プライバシーを保証される権利――などが明記される一方、「患者さんも病院から指示された療養については、専心しこれを守ることを心がけなければならない。医師と協力して療養の効果をあげることこそが大切なのである」としている。
カスハラが問題となっている今、患者と医療者の信頼関係があってこそ医療が成り立つことを、今一度、認識するタイミングなのかもしれない。
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