幹線が分断「根室本線」部分廃止は違和感だらけ 2016年の運休からJR北海道は復旧せず放置
しかし、沿線自治体は最終的には廃止を迫るJR北海道と道からの圧力に対抗することができなかった。
北海道の鉄道政策に詳しい北海道教育大学の武田泉准教授は「協議会では本来は鉄道ネットワークが影響を与える広域的な視点で議論が行われるべきであるが、密室協議の中で途中から鉄道廃止の影響が直接の沿線に限った矮小的な議論にすり替えられた」としたうえで、「2020年12月に国土交通省が発表したJR北海道への支援策について赤線区の支援に対する言及がなかったことから、道は、国からの支援もないので早く諦めてバス転換に同意せよと突き放した可能性が高い」と述べる。また、「この区間については道がいったん総合交通政策指針で地域間を結ぶネットワークであるとしているが、結局はその指針を反故にした」。さらに、「密室協議の場ですべてが決められ、地元住民はあとから報道発表によりその事実を知らされることから、鉄道の廃止に対して異議を唱える余地を与えられないことも北海道の特徴だ」と話す。
根室本線の富良野―新得間の廃止に当たってJR北海道は「バス転換の初期費用と18年間の赤字相当額」、「廃止となる沿線4市町村へのまちづくり支援金2億8000万円」の約21億円を拠出した。廃止区間の代替交通については富良野駅を拠点に4系統、幾寅駅近くの道の駅南ふらのを拠点に3系統の路線バスとデマンドバスが設定され、1日最大で34便の運行が、残った鉄道路線の接続をまったく考慮せずに行われている。
この代替交通の設定については裏では相当な苦労があり、ドライバーの高齢化問題からいつまで持続できるかは不透明だ。
復活を模索する動きも
根室本線の災害復旧に向けては地域住民も声を上げていた。新得町の住民団体「根室本線の災害復旧と存続を求める会」などは、2023年3月7日、鈴木直道知事あてに同区間の存続を求める署名8416筆を、道公共交通支援担当課長の小林達也氏(当時)に手渡した。小林氏はこのとき「知事に報告する。地域と一緒に考えていきたい」と話したという。
同会は、根室本線部分廃止の直前となる2023年3月15日に「根室本線の復活を考える会」に会名を変更。「トマムや新得の滞在客の多くは富良野にも観光に訪れる。外国人観光客を増やし地域活性化のためには、新得―富良野間を結ぶ根室本線は必要」として、今後は同区間の復活に向けての模索をするという。
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