幹線が分断「根室本線」部分廃止は違和感だらけ 2016年の運休からJR北海道は復旧せず放置

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この日は午後から、鉄道区間である富良野―東鹿越間はキハ40形4両編成が当てられ、東鹿越―新得間の鉄道代行バスについてもハイデッカータイプのバス4台運行が行われていた。しかし、東鹿越駅で列車を降りた乗客は、そのまま新得行の代行バスへと乗り継ぐものはごく一部で、大半は折り返し列車の待機列へと並びそのまま富良野へと折り返していった。代行バスは4台運行だったものの、このうち3台はほとんど乗客が乗っていない状況で運行されており、乗客のニーズは列車代行バスにはあまりないことは明らかだった。

また、3月30日と31日の2日間にかけて、札幌―富良野間でキハ261系はまなす編成とラベンダー編成の混結5両により臨時特急ふらの号も運行された。しかし、31日の札幌行は東鹿越―富良野間の最終列車の1本前に接続していたためか、乗客はほとんど乗っておらず、空気輸送状態で札幌へと発車していった。特急ふらの号を東鹿越駅発の最終列車に接続していれば、富良野駅から札幌方面に「ゆったり着席して帰宅したい」という潜在的なニーズを拾えていたはずであるが、顧客ニーズを把握できていなかったように感じられた。

この日、福岡県北九州市から根室本線のラストランに参加した50代自営業の男性は、根室本線の部分廃止の印象について「鉄道ネットワークが分断されることにより石勝線で災害が発生した場合の迂回路が確保できなくなってしまった。ドライバー不足の中で万が一の際に、北海道東部の農産品などの出荷に影響することから食料安全保障の面」、昨今、防衛省も自衛隊の輸送力向上のために鉄道貨物のさらなる活用を求めていることから「国防の面でも心配だ」と話してくれた。

JR北海道は復旧せず放置

今回、廃止となった根室本線富良野―新得間のうち、東鹿越―新得間が台風以外によって不通となったのは2016年8月のこと。被害が集中したのは落合駅と石勝線との合流部である上落合信号所までの約4kmの区間で、土砂流入や道床流出などの被害が相次いだ。復旧費用は約10億円とされたが、JR北海道は復旧せず放置し、東鹿越―新得間では列車代行バスによる輸送が続けられることとなった。

この金額については、2022年10月に新潟・福島豪雨の災害から11年ぶりに災害復旧した只見線の約90億円や、豪雨災害からの鉄道としての復旧を決めた肥薩線の約235億円と比較しても明らかに少額であることから、復旧せず放置していることを腑に落ちないと感じている人も多いようだ。

JR北海道はその3カ月後の2016年11月に「当社単独では維持することが困難な線区」11線区を発表。このうち輸送密度200人未満は赤線区、輸送密度200人以上2000人未満は黄色線区とされ、その後、赤線区の廃止が進められることになる。JR北海道には、すでにこの時点で、同区間の復旧を行う意思はなく富良野―東鹿越間については、なし崩し的に鉄道廃止に持ち込まれたといっても過言ではない。なお、富良野―新得間の台風災害前の輸送密度は152人であったが、東鹿越―新得間が代行バスによる運行となった2016年度には106人と一気に3分の2に利用者を落とし、末期となる2023年には53人となっていた。

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