トランプと闘うハリス副大統領の「弱みと強み」 選挙でもネックになる民主党最大のアキレス腱

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今回の大統領選挙戦では、メキシコ国境からの大量の不法移民流入が最重要の争点となっている。

トランプ政権は、不法移民の流入を防ぐため、メキシコとの国境に巨大な壁を構築した。バイデン政権は、政権発足直後の2021年1月に、この壁の建設を中止した。

ところが、その結果、中南米諸国のみならず、中国やアフリカ諸国などからも膨大な数の不法移民がメキシコ国境を越えてアメリカに不法入国するという事態になった。南部諸州の知事が彼らをバスで北部の大都市に送り込んだため、ニューヨークなどで不法移民が激増し、大規模な社会的混乱を引き起こしたのだ。

「移民を歓迎すべきだ」というイデオロギーが先走りしてしまって、バイデン政権は周到な準備なしに国境を開き、その結果、混乱を招いてしまったと考えざるをえない。

副大統領としての実績があまりない

ハリス氏は、不法移民大量流入の根本原因に対処する仕事を、バイデン大統領から託されていた。しかし、上述のように、ハリス氏は、バイデン氏から解決を託された問題で成果を上げていない。

いくつかの行動も批判の対象となった。副大統領就任から南部国境を視察するまで約6カ月かかったことについて、共和党議員や一部の民主党議員から反発を受けた。2021年6月にグアテマラを訪問した際には、(移民は)「来ないでほしい」と発言し、不興を買った。民主党内の左派からも反発を受けた。

移民問題は、もともと難しい問題だ。これは、民主党にとって最大の弱点であり続けている。

不法移民問題以外でも、ハリス氏は、副大統領としての実績があまりない。外交面でも目立った実績がない。このため、支持率は3割程度でしかない。民主党内にも、これまでの仕事ぶりに対する批判的な声がある。

さらに、ハリス氏の幹部スタッフが相次ぎ辞職したことから、指導者としての資質を疑問視する声もある。

「ハリス氏が行ってきた社会的弱者問題への取り組みは、高い評価を受けている」と述べた。しかし、マイノリティーのための政策は難しい側面を持っている。対象とされるマイノリティーは歓迎するが、それ以外の人々は逆差別だと受け取って反発するかもしれないからだ。「黒人女性層の支持が厚い」と述べたが、それは裏を返せば、「白人男性からは支持されにくい」ということでもある。

それに対してトランプ氏は、「強いアメリカを取り戻そう」と、アメリカ全体を対象にしたメッセージを送っている。

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野口 悠紀雄 一橋大学名誉教授

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のぐち ゆきお / Yukio Noguchi

1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、一橋大学名誉教授。専門は日本経済論。『中国が世界を攪乱する』(東洋経済新報社 )、『書くことについて』(角川新書)、『リープフロッグ』逆転勝ちの経済学(文春新書)など著書多数。

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