超長期で活動する看護師ボランティア、仮設住宅訪問や在宅被災者支援に取り組む

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 石巻市役所では現在、震災前に町内会活動の経験があった住民を見つけ出して、仮設住宅での自治会結成を働きかけている。しかし、キャンナスが重点的に訪問している10~20軒程度の小規模仮設住宅には手が及んでいないのが実情。キャンナスは逆に市役所から頼りにされる存在だ。

「お茶会」は市役所の承諾を得て集会所の鍵を借りることから始まる。開催に際しては、テーブルや座布団、お茶、お茶菓子などを用意。集会所の外にいすとテーブルを置き、住民に参加を呼び掛ける。集会所の中ではお茶会のほか、健康相談や血圧測定、作業療法士による体操教室や看護師によるアロママッサージ、ほかの団体による紙芝居などが催される。
 
 「自治会の結成に前向きな住民には、集会所の活用をアドバイスする一方、一人暮らしや介護が必要な方を見つけ出して、フォロー態勢を作る」(菅原健介氏)。

キャンナスでは活動に参加する看護師に細かな指示を出すことをせず、「現場で必要だと思われることをやってください」というスタンスを貫く。「その結果として、活動の幅がどんどん拡大。参加者の意見調整が大変」と菅原健介氏は打ち明ける。ただ、自由闊達な活動は参加者の意欲を引き出すとともに、活動の多様化にもつながっている。

「在宅被災者」と呼ばれる、自宅で孤立して生活を送っている住民への支援もその一つだ。6月から7月にかけて、津波の被害が大きかった石巻市渡波地区では看護師2人1組で約500軒の住宅を訪問。そこから訪問看護が必要と思われる住民を見つけ出し、地域の訪問看護ステーションや介護事業所に紹介した。
 
 だが、「医療や介護サービスにつながらないままになっている人は少なくない」(菅原健介氏)という。「仮設住宅では市の保健師やケアマネジャーが十分にフォローできておらず、住民や医療従事者の間でも必要に応じて訪問介護や訪問看護を積極的に利用する意識が乏しい」(同氏)。

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