東芝が失う「財界活動」の特別パスポート 失墜したブランドの信用回復が急務
不適切会計問題が明るみに出たことで、財界活動への“パスポート”は、しばらく失効しそうだ。
東芝の社長は4年周期で交代し、会長に退いてから経済団体の要職に就くのが慣例となっていた。かつては、社長時代の経営手腕が評価された石坂泰三と土光敏夫が経済団体連合会(経団連)会長を務め、新日本製鉄やトヨタ自動車、東京電力などとともに財界を支えてきた。
しかし、土光が第4代の経団連会長を務めてから30年以上、東芝の歴代社長はいずれも経団連の副会長止まり。そうした中で、財界総理のいすに最も近づいたのが、西田厚聰だった。
会長候補から外れた”誤算”
社長在任中の株価はライバルの日立製作所を逆転。大型M&Aや大胆な設備投資で事業を拡大するなど、実績を上げた。2009年5月には、御手洗冨士夫(当時・キヤノン会長)体制の下で、経団連副会長に就任。東芝の社長職を4年間務め、同年6月に会長へと退いた。
経団連では翌2010年、任期満了に伴う会長人事を控えており、財界では西田が有力候補の一人と目されていた。その当時、「西田さんが御手洗さんに電話をかけてアピールしていた」(東芝元幹部)という話もあり、本人も意欲を示していたようだ。
そこに、思わぬ誤算が生じる。当時東芝相談役だった岡村正が日本商工会議所の会頭を務めていたことだ。同一企業の社長経験者が二つの経済団体のトップに就くことに対して、経団連の会員企業から懸念を示す声があったとされ、あえなく西田は会長候補から外れてしまう。
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