日本超えた?多民族国家シンガポールの鉄道事情 空港の商業施設は人気観光スポット、列車も走る

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どのくらい物価が違うかは、鉄道運賃が物語っていて、ウッドランズ(シンガポール)からジョホールバールへが5シンガポールドル(約560円)に対し、ジョホールバールからウッドランズ(シンガポール)へは5リンギット(約160円)である。

この国境区間には鉄道の新路線を建設中で、MRTトムソンイーストコースト線の北の終点ウッドランズノースからジョホールバールセントラル(駅名はブキ・チャガル)までを結ぶ路線(Johor Bahru-Singapore Rapid Transit System)が2027年開業を予定している。

また、国境部分は物流の大動脈なので交通渋滞が深刻である。現在は渋滞解消のために架けられたシンガポール西部とマレーシアを結ぶトゥアス・セカンド・リンクという2番目の橋もあり、MRT東西線と南北線が接続するジュロン・イーストからこの橋を渡る路線バスも運行している。

風情たっぷりだったかつてのマレー鉄道

思えばシンガポール―マレーシア間、そしてタイに至る路線は、かつて「アジアで国際列車に乗れる区間」として人気で、日本からのパッケージ・ツアーが組まれたほどであった。

ディーゼル電気機関車が牽引する客車列車で、普通車、1等車、食堂車から成り、夜行には寝台車も連結、車窓に広がる熱帯の景色は風情たっぷりであった。

しかし、現在の鉄道にはシンガポール―クアラルンプール間を直通する列車はなく、鉄道の高速化などの計画はあるものの、少なくとも現時点では鉄道はこの区間の需要とは無縁のものになってしまった。

格安航空が多く飛び、高速バスも充実しているので、本数が少なく時間を要する鉄道は敬遠されてしまったのであろう。

筆者が最初にこの間を利用したときの普通車は、エアコンがなく、スコールになると大量の雨水が車内に吹き込んで大変だったが、スコールがやんだ後のジャングルを行く列車は爽快だった記憶がある。もうそんな経験ができる列車がないと思うと寂しい気分になる。

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谷川 一巳 交通ライター

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たにがわ ひとみ / Hitomi Tanigawa

1958年横浜市生まれ。日本大学卒業。旅行会社勤務を経てフリーライターに。雑誌、書籍で世界の公共交通機関や旅行に関して執筆する。国鉄時代に日本の私鉄を含む鉄道すべてに乗車。また、利用した海外の鉄道は40カ国以上の路線に及ぶ。おもな著書に『割引切符でめぐるローカル線の旅』『鉄道で楽しむアジアの旅』『ニッポン 鉄道の旅68選』(以上、平凡社新書)などがある。

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