なぜ「ドラえもん」は中国人の心を動かすのか たった1カ月で興行収入が100億円を突破

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中国も経済発展に伴ってテレビが急速に普及し、独りぼっちの中国の子供にテレビという「仲間」ができ、アニメを見るようになった。子供向けのアニメや番組が少なかった当時、「ドラえもん」が中国の子供の心をとらえたのである。

子供たちは「のび太も僕と同じ悩みをもっている」「私は独りじゃなかった」と共感した。しかし、実はドラえもんがもっとも子供たちにとって魅力的なところは、どうすればいいのかわからない時、相談に乗ってくれ、助けてくれることである。

仲間と力を合わせれば、魔法を使って、何か変わるかもしれない。そこでは自分の夢が実現する。のび太の仲間であるドラえもんは、テレビの前に座っている中国の少年たちが求めている人物とぴったり重なり、少年たちに夢の力を与えたのだ(「ドラえもん」の中国語名は「哆啦A梦」と音訳されているが、最後の「梦」は「夢」の簡体字である。これは「夢の世界につながる」という意味に解釈されている)。

大人になって、現実の厳しさを知った小皇帝たち

この文脈の中で言えば、「80後」「90後」の若者が成人となった後、競争社会に疲れて癒やしを求めているのも、「ドラえもん」が大ヒットした理由だろう。

彼らは一人っ子で寂しい子供時代を過ごしてきたが、家の中では「小皇帝」として祖父母・両親から大事にされ、過保護・過干渉の状況で育てられてきた。

しかし、「80後」、「90後」だけで人口は約4億人もいる。つまり、この層だけで日本の全人口の3倍を大きく上回っており、厳しい競争の中で生きてきた。彼らは、子供の頃「あなたは勉強だけすれば良い」「ほかのことを一切考えなくて良い」「遊ぶ暇があったら勉強・ピアノでもしなさい」「友達もライバルだ」と言われ育ったのである。

したがって、友達と思う存分遊ぶこと、仲間と遠慮せずに腹を割って付き合うことは、彼らにとって程遠い話である。つまり、彼らにはドラえもんとのび太のような関係が欠けており、現実には、癒やされる「心の拠り所」はほとんどないに等しい。

中国の若者には、勉強を頑張ったがうまく行かず、政府の政策による大学入学者数の増枠でなんとか入学、だが、結局はぶらぶらと4年間を過ごして卒業……、そして家族のコネを使ってなんとか就職ができた、という人が少なくない。

彼らは社会に入ると、大人の世界が面白くないことがすぐにわかる。家族の中心だった若者は、寂しく不自由ではあったが、庇護された環境下で勉強だけすればよかった。しかし、社会人になり、甘くない社会の現実を知り、精神的に疲れている。

この現実社会の厳しさは親に伝えても、「就職できたことだけでも感謝しろ」と言われるのがオチである。自分の面子(メンツ)が失われるから、友人も相談できない。そのため、疲れた時、心が折れそうになった時に、ドラえもんの映画のように癒やされるものを求めるようになっているのではないか。

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