インテルにできて、日本企業に足りない戦略 なぜ従業員にCSRが浸透しないのか

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「店舗を訪問し従業員と対話すれば、彼らは本当の話を伝えてくれる。発生する問題への最良の解決策、あるいは新しいアイデアも教えてくれる。店舗での従業員との会話は取締役との会話より重要で、業務効率を向上させ費用の節約にもつながる」(エリス氏)。このように従業員から出されるアイデアはCSR戦略推進には欠かせないのだ。

④CSRチャンピオン(推進者)

従業員の中には、CSRやサステナビリティに関係する作業に非常に興味があり、推進したいと思っている人たちがいる。彼ら彼女らを社内からみつけ出し、CSRチャンピオン(推進者)という企業のCSR・サステナビリティ活動のサポーター、そしてリーダーとなる人々を選出し、それぞれが推進していくことも有効だ。

前出のウォルグリーン・ブーツ・アライアンス(旧アライアンス・ブーツ)では、社内で「ビジネスとCSR」のために何かをしたい人々、つまりCSRチャンピオン(推進者)を見つけだし、CSR戦略のターゲットの達成の役割を担わせている。

「従業員に仕事上でより自信を持たせ、さらにビジネスを持続可能にするアイデアを思いつかせる」(エリス氏)効果があるという。

M&Sでも、自社のCSR戦略である「プランA」を推進するプランAチャンピオンを選出。彼らには店舗での中心的な推進役・リーダーとして活躍している。

⑤CSRアワード

CSRやサステナビリティに関する社内表彰を設定。社内でその功績が優秀な人を称えることで、従業員のモチベーション向上に役立っている。

M&Sでは、年に1回プランAの推進について顕著な実績をあげた個人、グループを表彰している。内容は、「環境保護賞」「プランAチャンピオン・オブ・ザ・イヤー」「ファンドレイジング賞(個人・グループ)」「ボランティア賞(個人・グループ)」「キャリア賞」などだ。

表彰式を開催し、表彰の模様と結果をイントラネットで全社に告知し、従業員のモチベーションを高めるとともに、プランAの推進に一役買っている。

持続可能な社会の構築に必要なのは一人ひとりの意識

このようにCSR戦略を遂行するには、企業のトップや経営陣が重要性を理解し、CSR戦略を経営戦略として位置づけることが必要だ。そのうえで従業員全員が重要性を理解し、実行していくことが、CSR推進のいちばんの原動力となる。身近なステークホルダーである従業員とのCSRコミュニケーション・エンゲージメントの見直し、取り組み強化がCSR活動推進の足掛かりになるはずだ。

さて、今回まで全8回の連載を通じ、皆さんにお伝えしたかったのはCSRやサステナビリティの問題は非常に多岐にわたり、企業の大小にかかわらず重要であるということだ。企業人として、あるいは個人としてそれぞれの立場で理解し進めていかなければCSRの成功はない。

現在、「地球はこのままでは持続可能でない状態だ」と言われている。これを持続可能にするために、一人ひとりが少しでも改善を考え行動することが必要だ。人々の気づきは波及し、そしてひとつの行動は次の行動へとつながっていく。この記事を読んだあなたは、すでに貴重な存在。「持続可能な社会の構築」は、あなたの行動にかかっている。

下田屋 毅 サステイナビジョン代表取締役

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しもたや たけし

 下田屋 毅 しもたや たけし Sustainavision Ltd. (サステイナビジョン)代表取締役

英国ロンドン在住CSRコンサルタント。日本と欧州とのCSRの懸け橋となるべくSustainavision Ltd.を2010年英国に設立。ロンドンに拠点を置き、CSRコンサルティング、CSR研修、CSR関連リサーチを実施。
1991年大手重工メーカー入社。労働安全衛生主担当として、「安全衛生管理要綱」作成、「安全内部監査制度」を企画・導入を実施。他に事業部PR・広報宣伝強化のプロジェクトマネジャーなども担当。環境ビジネスの新規事業会社立ち上げ後2007年に渡英。英国イースト・アングリア大学環境科学修士、英国ランカスター大学MBA(経営学修士)修了。ビジネス・ブレークスルー大学非常勤教員(担当:CSR)、国際交流基金ロンドンCSRセミナーシリーズ2011/2012プロジェクトアドバイザー。
サステイナビジョン・ウェブサイト: http://www.sustainavisionltd.com/

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