「店舗を訪問し従業員と対話すれば、彼らは本当の話を伝えてくれる。発生する問題への最良の解決策、あるいは新しいアイデアも教えてくれる。店舗での従業員との会話は取締役との会話より重要で、業務効率を向上させ費用の節約にもつながる」(エリス氏)。このように従業員から出されるアイデアはCSR戦略推進には欠かせないのだ。
従業員の中には、CSRやサステナビリティに関係する作業に非常に興味があり、推進したいと思っている人たちがいる。彼ら彼女らを社内からみつけ出し、CSRチャンピオン(推進者)という企業のCSR・サステナビリティ活動のサポーター、そしてリーダーとなる人々を選出し、それぞれが推進していくことも有効だ。
前出のウォルグリーン・ブーツ・アライアンス(旧アライアンス・ブーツ)では、社内で「ビジネスとCSR」のために何かをしたい人々、つまりCSRチャンピオン(推進者)を見つけだし、CSR戦略のターゲットの達成の役割を担わせている。
「従業員に仕事上でより自信を持たせ、さらにビジネスを持続可能にするアイデアを思いつかせる」(エリス氏)効果があるという。
M&Sでも、自社のCSR戦略である「プランA」を推進するプランAチャンピオンを選出。彼らには店舗での中心的な推進役・リーダーとして活躍している。
CSRやサステナビリティに関する社内表彰を設定。社内でその功績が優秀な人を称えることで、従業員のモチベーション向上に役立っている。
M&Sでは、年に1回プランAの推進について顕著な実績をあげた個人、グループを表彰している。内容は、「環境保護賞」「プランAチャンピオン・オブ・ザ・イヤー」「ファンドレイジング賞(個人・グループ)」「ボランティア賞(個人・グループ)」「キャリア賞」などだ。
表彰式を開催し、表彰の模様と結果をイントラネットで全社に告知し、従業員のモチベーションを高めるとともに、プランAの推進に一役買っている。
持続可能な社会の構築に必要なのは一人ひとりの意識
このようにCSR戦略を遂行するには、企業のトップや経営陣が重要性を理解し、CSR戦略を経営戦略として位置づけることが必要だ。そのうえで従業員全員が重要性を理解し、実行していくことが、CSR推進のいちばんの原動力となる。身近なステークホルダーである従業員とのCSRコミュニケーション・エンゲージメントの見直し、取り組み強化がCSR活動推進の足掛かりになるはずだ。
さて、今回まで全8回の連載を通じ、皆さんにお伝えしたかったのはCSRやサステナビリティの問題は非常に多岐にわたり、企業の大小にかかわらず重要であるということだ。企業人として、あるいは個人としてそれぞれの立場で理解し進めていかなければCSRの成功はない。
現在、「地球はこのままでは持続可能でない状態だ」と言われている。これを持続可能にするために、一人ひとりが少しでも改善を考え行動することが必要だ。人々の気づきは波及し、そしてひとつの行動は次の行動へとつながっていく。この記事を読んだあなたは、すでに貴重な存在。「持続可能な社会の構築」は、あなたの行動にかかっている。
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