イケアにあって、日本企業にはない経営哲学 CSR成功のカギはトップダウンにあり

✎ 1〜 ✎ 5 ✎ 6 ✎ 7 ✎ 8
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
(撮影:梅谷 秀司)

本連載(過去の記事はこちら)では、これまで欧州での企業事例やトレンド、外部のリスクを企業活動の中でどのように対応すればよいのかなどについて解説してきた。第7回となる今回は、企業がCSRやサステナビリティ活動を行ううえで、どうすればスムーズに進むのか考えていきたい。

この点についてトップダウン、ボトムアップの双方からのアプローチのどちらがより重要かといえば、間違いなく企業トップ・取締役などの経営層の正確な理解とコミットメントのトップダウンだろう。

日本企業のCSR部門は苦労している

ただ、日本企業のCSR担当部門は、組織上は社長直轄など重要な位置づけとされていながらも、多くは経営層からCSRに関する理解が得られず、トップダウンでの活動ができず苦労しているという現実がある。

こうした企業では、トップ・取締役・経営層が「CSR」について認識が偏っていることが多い。たとえば、「コンプライアンス」「慈善事業」「環境保護活動」や「ボランティア活動」などととらえているか、コストが発生する本業の追加で行うものという考えをよく耳にする。

このため、CSR担当部門と上層部でギャップが生まれ、同じ「CSR」という言葉を使って議論しても、お互いの根本的な言葉の定義の理解が異なり、同じ方向にベクトルを合わせることが難しくなる。

改めて主張するとCSRは「企業活動」そのもので、経営戦略の中に統合されるべきものだ。この点においてCSR担当部門の役目は、「経営層に本来意図するCSR活動についての理解を進めコミットメントを得て、トップダウンでの実施」を実現することにある。これは日本だけでなく欧州をはじめとするその他の地域でも決して簡単ではない。

では、企業トップ・取締役・経営層をどのように巻き込めば、CSR・サステナビリティを経営戦略として実施できるようになるのだろうか。

参考になるのは、欧州のCSR先進企業だ。経営層は、「CSR・サステナビリティは企業活動を進めていく上で必要不可欠で、戦略的に企業経営に取り組めば多くのメリットをもたらし、企業と環境・社会の持続可能性に貢献する」と考えている。

たとえば、世界最大の家具販売店であるイケア・グループ社長兼CEOのペーテル・アグネフィエル氏は、「人々に快適な生活を提供しながら、世界は資源不足や気候変動の影響に取り組まなければならない。これは今世紀最大の課題のひとつだ。イケアを含む誰もが、解決策を見つける役割がある。私はビジネスを行う上で持続可能な方法を進める以外、他に方法がないと認識している」と企業を含む社会全体で取り組む責任があるという。

次ページ英国・老舗スーパーのCSR戦略
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事