イケアにあって、日本企業にはない経営哲学 CSR成功のカギはトップダウンにあり

✎ 1〜 ✎ 5 ✎ 6 ✎ 7 ✎ 8
拡大
縮小

130年の歴史を持つ英国の老舗スーパーマーケットであるマークス&スペンサーCEOのマーク・ボーランド氏は、同社のCSR戦略である「プランA」について「我々の計画の中心にプランAはある。われわれがビジネスをどのように実行するかという重要な部分で、実質的に顧客やビジネスパートナーの経験を向上させ、よりよい仕事のやり方を表すもの」とビジネスを行うための基本方針と位置づける。

※同社のプランAについては、第3回目で紹介した

このように自社にとってのリスクを把握し、それを機会としてビジネスに変えることでさらなるビジネスチャンスとできる。社会と環境面でのリスクを把握しマネジメントしていけば、中長期にわたり株主そしてステークホルダーとの関係を良好に保ち、促進にもつながる。そうした活動を続けることで結果的にビジネスを拡大できる可能性が高い。

企業経営戦略をビジョンに大きな影響を与える

さて、筆者は企業がCSRを適切に行えば、以下のような効果が期待できると考える。

●企業経営戦略とビジョンに大きく影響を与え、さらなる強化が可能となる
●取締役レベルからの監視で、彼らが説明責任の必要性を認識できる
●リスク認識とリスクマネジメントの強化につながる
●各取締役の専門性の再確認と取締役会の再構築へのきっかけとなる
●ステークホルダーへの適切な情報開示の実現

これらの積み重ねがより強い企業への進化につながっていく。

では、続いて、実際にトップダウンでCSRを実施している企業を3社ご紹介しよう。

1社目はデンマーク・コペンハーゲンに本社を構えるノボノルディスク。同社は糖尿病ケアを90年以上にわたって研究開発をしてきた糖尿病分野の世界的リーダーだ。製品は5大陸180カ国以上で販売され、従業員は世界75カ国に現在4万1900人。血友病と成長ホルモン不全のケアでも著しい貢献をしている。

企業の経営方針をトリプル・ボトム・ライン(Triple Bottom Line: TBL)とするCSRの世界的リーダーでもある。トリプル・ボトム・ライン(TBL)とは、社会への責任、環境への責任、財務上の責任にバランスをとり意思決定する考え方で、ノボノルディスクは、その中心に患者を据えている。TBLを意識した経営が、企業のサステナビリティにつながると考えている。TBLは2004年以来、同社の定款に正式に明記され、「ノボノルディスク・ウェイ」という企業価値観にも組み込まれている。

経営トップは、大きな権限をコーポレート・サステナビリティ・チームに与えている。ノボノルディスクの世界中の事業のすべての部門で、工場労働者や販売員から取締役会まで幅広いTBLの実践の舵取りがこのチームに委ねられている。

ノボノルディスクのスザンヌ・ストーマー副社長は、「コミットメントし、言動と行動の一貫性を示すことが、全指導者の最も重要な役割」、「TBLとサステナビリティを『追加で行うこと』、『できたらよいこと』と見られるのが最大の問題。我々が『しなければならないこと』として提示し、ビジネスの一環として取り組む」とサステナビリティは事業活動の必須項目であると強調する。

次ページそしてイケアだ!
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT