厳しすぎる環境でも残る「街の電気屋」の知恵 なりふり構ってはいられない

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安売りしない代わりに、お客さんに呼ばれたらすぐ駆けつける。たとえ、電球ひとつでも喜んで即日、お客さんの家に配達する。家電の使い方がわからないお客さんがいたら、何度でも家に行って説明する……。それだけではない。家の留守番、花の水やりだって引き受ける。ヤマグチのモットーは、“究極の御用聞き”だ。

あえて顧客を絞り込む

1965年に創業した山口社長にとって、大きな節目となったのが1990年代前半だった。安さを武器にした郊外型の家電量販店が増え始め、ヤマグチも大きな打撃を被った。当時、同業の多くは量販店の価格に近づけて対抗しようとしたが、山口社長から見れば、それは自殺行為に等しかった。

街の小さな家電販売店と大手の量販では仕入れの量がまったく違う。にもかかわらず、量販に対抗して値段を大幅に下げれば、粗利が吹き飛び、すぐに経営が立ちゆかなくなることが目に見えていたからだ。

そこで実践したのが、自分たちが商売していくエリアと顧客層をあえて絞り込むこと。従来は拠点の町田市以外の遠方にも営業担当者が回っていたが、商圏を町田市内に限定。また、それまでの取引履歴から、重点対象とする顧客を抽出した。その中心となったのは、地元に昔から住んでいる高齢者である。

顧客を絞り込んだ分、従来以上に濃い営業を心掛けた。営業担当者が自宅を1軒、1軒回って、洗濯機や冷蔵庫など、家電製品の使用年数や利用状況などの詳細なデータを収集し、適切なタイミングで新製品を提案。買い物代行なども買って出て、何でも相談に乗ってくれる「ご近所の電器屋さん」として顧客から信頼を築いていった。

さらに、週末には店頭でイベントも開催。家電だけでなく、米や野菜、肉や魚を青空市場のように大量に並べて売った。「イベントにこだわるのは、お客さんと私たちをつなぐ“ベルト”を増やしたいから。営業担当者とお客さんにはすでに一本のベルトがある。もう一本、イベントでお客さんと店とのベルトを作りたかった」(山口社長)。

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