「国土形成計画」に"あの言葉"が復活するワケ 今後10年の指針に書かれていること

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「国土の均衡ある発展」という文言を復活させた意味とは?(写真は北海道サロマ湖で工事中の橋梁:gontabunta / PIXTA)

「まるで時代に逆行しているみたいだな」

このたび新たに策定される「国土形成計画」(案)を読んだある自民党の関係者はこうつぶやいた。同計画は「国土形成計画法」に基づき、今後おおむね10年間の国土づくりの方向性の指針となる。

関係者が示したのは同案の中の以下の箇所だ。

地域の個性と連携を重視する「対流促進型国土」及びそのための重畳的かつ強靭な「コンパクト+ネットワーク」の国土構造、地域構造の形成は、各地域の固有の自然、文化、産業等の独自の個性を活かした、これからの時代にふさわしい国土の均衡ある発展を実現することにつながっていく。

 

ここに書かれている「国土の均衡ある発展」という言葉は、かつて「国土形成計画」の前身である「全国総合開発計画」が目標としたものだ。

「全国総合開発計画」とは?

「全国総合開発計画」とは1950年に制定された「国土総合開発法」に基づいて策定された公共事業の総合計画で、1998年の橋本龍太郎内閣時に閣議決定されたものまで5つある。

最初に作られたのは池田勇人内閣時の1962年。その前年から所得倍増計画が実行され、2年後には東京オリンピックも控えており、まさに「イケイケドンドン」の頃だった。

2つめの「新全国総合開発計画」は佐藤栄作内閣時の1969年に制定され、新幹線や高速道路など大規模プロジェクトが次々と詰め込まれた。その投資規模は130兆円から170兆円にも上る巨大な計画だ。

福田赳夫内閣時の1977年に決定された「第三次全国総合開発計画」は、オイルショックを受けて「安定成長」を目指したものの、その後の大平正芳首相の死去などで頓挫した。そして1987年の中曽根内閣時に決定された「第四次全国総合開発計画」はバブルを生みだした。投資規模は実に1000兆円にも上った。

しかしながら、バブル崩壊を経験し、人口減少が進む中で、量的拡大を求める従来の計画手法は時代にあわなくなった。

次ページ「国土総合開発法」は「国土形成計画法」へ
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