「国土形成計画」に"あの言葉"が復活するワケ 今後10年の指針に書かれていること
そこで「国土総合開発法」は改正され、「国土形成計画法」として生まれ変わった。2008年7月に決定された現計画では、「量的拡大の開発基調」から「成熟社会型の計画」への転換を謳っている。
今回策定される新計画案でも、少子高齢化の進展と国際状況の劇的変化、深刻化する環境問題や高度情報化社会の到来などを踏まえ、ヒト、モノ、カネ、情報が動く対流促進型国土の形成と、これらを集積して繋げていく重層かつ強靭な「コンパクト+ネットワーク」を提唱している。その中に「国土の均衡ある発展」という文言が入っているのを見ると、いささか違和感がある。
大臣は「均衡ある発展」に反対しているのに・・・
そもそも今年3月に発表された中間報告には、この「国土の均衡ある発展」は入っていなかった。そして「国土の均衡ある発展」には、同計画案の主務大臣である太田昭宏国土交通相が反対していたのだ。昨年9月の内閣改造で留任した太田大臣は、初閣議後の記者会見で「国土の均衡ある発展を目指した流れを変えなくてはならない」と、はっきり述べている。
にもかかわらず、最後になって「国土の均衡ある発展」を案に挿入させることができたというのは、相当の力のある人物に違いない。いったい誰なのか。
「それは二階俊博自民党総務会長の他においていない」
関係者は口ぐちにそう証言した。二階氏はいまや「影の幹事長」とも言われるほどで、党内きっての権力者だ。2011年の東日本大震災の直後には、党国土強靭化総合調査会長に就任している。2013年に国土強靭化基本法を成立させ、盛り込んだ予算はトータルで200兆円にも上るという。このように、政界屈指の実力者で辣腕の道路族議員でもある二階氏に対して、さすがの国土交通省も反対できなかったとしても不思議はない。
確かに、新たな計画案からは、二階カラーが感じられる。前回は検討されていない「国土基盤の戦略的メンテナンスの推進」も盛り込まれている。これは800兆円にも及ぶ公共インフラの整備費用で、新しい公共事業といえる。
たとえば橋梁は2033年にはその67%が建設後50年を超えるとされ、政府はその他のインフラも含めた更新・修繕費用として、今後50年で190兆円必要になると計算している。
老朽化したインフラは危険であり、修繕は必要だ。しかし、すべてのインフラの修繕が必要なわけではない。老朽化したインフラを修繕するのか、撤去するのか、という選別が必要になってくる。しかし、「国土の均衡ある発展」が前面に出てしまうと、そうした議論が行われなくなる恐れがある。
同計画案は23日に自民党の国土交通部会にかけられた後、閣議決定される見通しだ。この計画案の行方には目を光らせる必要がありそうだ。
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