日立の高速鉄道、イギリスでの意外な評価 現地でイギリス人に聞いてみた!

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さて、番外編と言えるかもしれないが、今回はジャベリンを実際に運転する運転士2人にも聞いてみた。仕事が終わった後に、突然質問したにもかかわらず、真剣に答えてくれたお2人には感謝するが、いずれも最初に出た言葉は、ジャベリンの高い信頼性であった。

「もちろん、日本製であることは知っているよ。英国製の車両はすぐに故障したりするが、まず故障しない高い信頼性、そして癖が無くて操縦性も良いね、とても運転がしやすい。あ、エアコンがよく効くのがありがたいね(笑)」と、さすが毎日乗務している者らしい意見を聞くことができた。

工場を英国内に置く理由とは

イタリアの最新型高速列車「フレッチャロッサ・ミッレ」は、地元アンサルドブレダ社とボンバルディア社の合作。将来的には追加発注のオプションもあるが、日立の買収によってどういった影響があるのか

ところで気になるのが、日本製品を英国内へ導入することに対して、反対する意見があるかどうかだ。この質問に対して、なんと全員が日本製品を導入することに賛成しており、また英国内へ工場を置き、雇用が増えることはむしろ歓迎すべきことだ、という意見が大勢を占めた。

実際のところ、英国の鉄道車両メーカーは、業界再編によって他国のメーカーなどに吸収合併されているので、純粋な英国車両メーカーというのは存在しないが、たとえばボンバルディア(本社カナダ、ただし鉄道車両部門の本社はドイツ)はダービーに工場を持っているので、英国製の車両と言える。また、シーメンス(ドイツ)はドイツの工場で車両を製造しているが、英国内にメンテナンス工場をいくつも持ち、また医療機器メーカーとして有名な同社は、鉄道車両以外の分野でもすでに多くの雇用実績がある。

日立が山口県で製造して、それを輸出するという形態を採ることは、コストと雇用の両面から見て、決して好ましいものではないと英国政府が考えるのは自然なことである。日立も、今後ヨーロッパを中心とした海外で事業を拡大していくためには、現地工場の建設は避けて通れないことだったのであろう。

2015年2月24日、日立製作所はイタリアの大手重工業メーカーのフィンメカニカ社から、鉄道車両・信号部門である傘下のアンサルドブレダ社、アンサルドSTS社を買収したことを発表した。

親会社のフィンメカニカは、航空・防衛関連の業界では世界トップ10に入る有力メーカーだが、その中の鉄道部門である2社は経営が悪化しており、かねてより売却が検討されていた。中国を含む、いくつかのメーカーが手を挙げたが、最終的に日立が獲得。アンサルドブレダ社は、150年の歴史を誇る鉄道車両メーカーで、同社の自動運転地下鉄システムは高い評価を得ており、イタリア国内に複数の工場を持つ。

一方アンサルドSTSは、信号・制御システムにおける有力企業のひとつで、複雑なヨーロッパの信号システムを理解し、取り入れるために、日立としては喉から手が出るほど欲しかった分野であろう。両社の買収は、英国さらには欧州全体へ進出するための足掛かりとして、非常に重要だったことは間違いない。両社を手に入れることで、欧州での日立の評価が今後どのように変わるか、目が離せない。

橋爪 智之 欧州鉄道フォトライター

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はしづめ ともゆき / Tomoyuki Hashizume

1973年東京都生まれ。日本旅行作家協会 (JTWO)会員。主な寄稿先はダイヤモンド・ビッグ社、鉄道ジャーナル社(連載中)など。現在はチェコ共和国プラハ在住。

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