スズキがフォルクスワーゲンと“破談”、中身がなかった強者連合
「大人の付き合いができなかった。笑って別れるのが一番」(鈴木修スズキ会長兼社長)。9月12日、スズキは会見を開き、独フォルクスワーゲン(VW)との提携を解消する、と発表した。
両社が提携したのは2009年12月。世界第3位のVWと、小型車のノウハウに優れインドで5割近いシェアを持つスズキとの提携は、当時「強者連合」と評された。
しかしその関係は、わずか1年9カ月で破談となった。VWは正式に提携解消に合意していないが、鈴木会長は「解消の考えは変わらない」と明言、破談は決定的といえる。提携を担当した原山保人副社長は「困難な調整に時間を費やし、1年9カ月を棒に振った」とまで語る。
鈴木会長が解消の理由として挙げたのが「経営哲学の違い」。VWのスズキに対する出資比率は19・9%。鈴木会長はスズキの自主独立にこだわった。が、VWはスズキに対し、暗に出資比率引き上げを求めていたようだ。世界販売1000万台(10年727万台)に向けて覇権主義を掲げるVWとは、当初からボタンを掛け違えていた。
提携でスズキが期待したのは、VWのハイブリッド車(HV)やディーゼルエンジンなど環境技術だった。だが技術の利用には「スズキの経営の足かせになる」(原山副社長)ような制約があったという。機構や設計思想の違いでVWの技術自体を使うのも難しい。
そうした中、スズキは1・6リットルのディーゼルエンジンを伊フィアットから調達すると決断、溝を深くした。一方のVWはポルシェとの統合問題を抱え、スズキとの提携を後回しにした面もある。