なぜ?「N-BOX」新型登場でも10%以上の販売減 好敵「スペーシア」と異なる商品力の改め方
価格を140万円台に抑えた先代型のGは、装備が乏しく人気も低いグレードだったが、N-BOXの価格を割安に感じさせる効果は発揮していた。
このほか、新型の売れ行きに影響を与えた要因として、先代N-BOXの高人気も挙げられる。先代型は2017年の発売以降、国内年間販売台数1位をほぼ一貫してキープしたから、N-BOXの購入を希望する大半のユーザーに行きわたった。その結果、新型のニーズが下がっている。
ライバルの「わかりやすい」商品力アップ
ライバル車の動向も見逃せない。N-BOXとほぼ同じ時期に、スズキ「スペーシア」も新型にフルモデルチェンジしているのだ。
新しい「スペーシアカスタム」は、従来型以上にフロントマスクの存在感を強め、インパネの周辺も立体的に仕上げた。新型になって大人しくなったN-BOXとは対照的だ。
売れ筋グレードの後席には、ミニバンのオットマンに似たマルチユースフラップが備わり、リラックスして乗車できる。フラップを反転させると、後席の上に置いた荷物が床に落ちにくい工夫も施した。さらにスペーシアは、エアコンの冷気を後席に送るスリムサーキュレーターなども採用しており、収納設備も豊富だ。
また、マイルドハイブリッドを採用するスペーシアは燃費もよく、自然吸気エンジンの売れ筋グレードで23.9km/L(WLTCモード)に達しており、N-BOXの21.6km/Lに比べると、燃料代を約10%節約できる。
N-BOXとスペーシアを乗り比べてみると、N-BOXのほうが優れている部分も多い。動力性能、走行安定性、ステアリング操作に対する車両の応答性、乗り心地、前後席の座り心地などの基本性能は、N-BOXが上まわる。
スペーシアの後席は、マルチユースフラップが使い勝手を高めている一方で、座面の硬さに偏りを生じさせており、座り心地はいま一歩だ。
しかし、外観の存在感、内装の見栄え、快適装備のわかりやすさなどは、スペーシアが勝っている。
N-BOXの開発者は「内装の形状を工夫したから、スリムサーキュレーターがなくても、後席までエアコンの冷気が届く」というが、そういう話ではない。天井に送風機が装着され、後席に座った乗員の顔にエアコンの冷風を当てられることが、有り難みや価値なのだ。
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