日本は再生医療で世界に貢献できる 岡野光夫・東京女子医大名誉教授に聞く

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――米国の投資意欲が高いのはなぜだと思いますか。

米国は新しい産業を興すことに対して、ものすごく意欲的。「やらない」ことのリスクを大きいと考える人たちが多い。1980年代、ボストンの小さなエリアに、(世界最大のバイオベンチャーとなった)アムジェンをはじめ、何百社というベンチャーが立ち上がった。

そういう雰囲気が日本にはない。日本は既得権が強くて、「やる」ことのリスクばかり議論し、新しいことをやらないことを望む人が圧倒的に多い。だが、「やらない」ことのリスクは大きい。この国から新しいものがなくなってしまうからだ。人材だって、小学生から教育という投資をして大人になる。大人と同じことができないからと子どもを教育しなかったら、何もできなくなってしまう。

薬を大人だとすれば、再生医療はまだ中学生くらい。上手に投資しながら、ひょっとすると薬より稼ぎ出すようになったり、人類を救うようになったりするのではないかという視点で、未来を考えていくべきなのではないでしょうか。

米国のものまねでなく、日本の技術で

――世界の医療をリードしてきたのも米国でした。

米国のユタ大学にいたことがありますが、これまでは米国で教わったものを日本に持ち帰るのが通例だった。でも僕は、日本人のテクノロジーで世界の患者を治すことができないかと、ずっと思っている。米国のものまねではなく。

日本では医学部に、偏差値の高い非常に優秀な人たちが集まってくる。こういう人たちを、グローバルで戦う力に変えたい。医師として尊敬され厚い手当てを受ける、あるいは論文で認められる、というところにとどまらず、世界の患者を救う力になってもらいたい。

僕のところには米国に限らず世界中から医師や研究者が来ています。海外から学ばせてもらうのではなく、日本のテクノロジーを基盤に医療と融合させて、グローバルで大きく育てたい。細胞シートによる治療ができる人を海外でもどんどん増やす。目的は世界の多くの患者を治すことですから。

――再生医療では日本が世界でどんな役割を果たせたらいいと思いますか。

再生医療に関しては、珍しく日本人の関心が集まって、「みんな頑張ろう!」という雰囲気になっています。苦しんでいる世界中の患者を日本のテクノロジーで治したら、「日本人ってやっぱりすごいよね」って尊敬される。こんなふうに世界から感謝され、尊敬される国になることを本気で目指している。

小長 洋子 東洋経済 記者

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こなが ようこ / Yoko Konaga

バイオベンチャー・製薬担当。再生医療、受動喫煙問題にも関心。「バイオベンチャー列伝」シリーズ(週刊東洋経済eビジネス新書No.112、139、171、212)執筆。

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長谷川 愛 東洋経済 記者
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