欧米経済の病名は大不況でなく大収縮--ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授
どうして今なお人々は今回の金融危機を「グレートリセッション(大不況)」と呼んでいるのだろうか。この用語は、米国や他の国々が、直面する問題に危険な誤診を下したことに端を発しており、それがひどい経済予測や政策へとつながった。
「大不況」という表現は、「今の経済は典型的な景気後退のコースをたどっているが、深刻さの程度が大きいだけで、重い風邪のようなものだ」という印象を与える。そのため、今回の景気下降局面で、経済予測の専門家やアナリストたちは戦後の幾度かの米景気後退に例えようとして、ひどい勘違いをしている。しかも、あまりに多くの政策立案者が、「財政政策や大規模な企業救済策といった従来の政策手段によって、今回の大不況に対応できる」という考えに頼ってしまっている。
しかし、本当の問題は、世界経済がひどくオーバーレバレッジ(借り入れによる投資の行き過ぎ)になっていることだ。デフォルト(債務不履行)、金融抑圧、インフレなどによって債権者から債務者に富を移転する計画なしには、そこから簡単に抜け出すことはできない。
現在の危機の呼び名として、より正確なのは「第2のグレートコントラクション(大収縮)」だ。米メリーランド大学のカーメン・ラインハート教授と私が今回の危機を深刻な景気後退の典型としてではなく、深刻な金融危機の典型として分析し、共著『国家は破綻する』の中でこの呼び名を提案した。