何の価値も生み出さない業務に、現場は忙殺されているのだ。
悲鳴すら上げられない現場が、不正に手を染めざるをえないところまで追い込まれているケースもある。
ダイハツで不正が急増した「裏側」
たとえば、ダイハツで不正が急増したのは2014年以降のことで、その背景にあるのが、「短期開発」という手法だ。
2011年に発売した自動車で成功し、短期開発がほかの車種でも踏襲された。やがて、「むちゃくちゃな日程が標準となる」ような状態になった。
ダイハツは、トヨタグループにおける「アジア市場の開拓者」としての役割を担っていた。そのため、同時期にトヨタ向けのOEM(相手先ブランドによる生産)供給車が増えていた。
ダイハツの現場では、短納期での開発・生産が至上命令となり、こうした無理が、車両開発の最終工程である認証試験に押し付けられた。
もちろん、短期開発自体が悪いわけではない。開発プロセスを短縮し、無駄なコストを省く企業努力は必要だ。
しかし、開発期間が圧縮されたからといって、そのプロセスでなすべき機能や業務が損なわれてしまったのでは、元も子もない。
ダイハツの事案では、2011年から品質保証などの部署の人員を減らしはじめ、衝突試験を担う安全性能担当部署の2022年の人員数は、2010年に比べ3分の1に減っている。
「開発期間を短縮しろ」「もっとたくさん生産しろ」と号令をかける一方で、「コストを減らせ」「人を減らせ」と追い立てまくる。
商品開発のスピードアップ、商品やサービスの品質向上など、企業の優位性に直結する多くの要素が、現場力によって規定される。
そこには歴然とした「能力格差」があるのだが、ダメな経営者は「問題が起こる理由」や「自社が劣っている理由」を「現場の怠慢のせい」だと短絡的に認識する。
現場への「過度な負荷」「不適切な圧」は「経営陣の想像力が欠如している」と言わざるをえない。
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