日本の現場を殺した「3つの過剰」という根本問題 組織を強くする「本当に必要な管理」とは?

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敬愛する一橋大学名誉教授である野中郁次郎先生は、かねて日本企業が抱える病巣のひとつとして、次の「3つの『過剰』」を指摘している

①オーバー・アナリシス(過剰分析)
②オーバー・プランニング(過剰計画)
③オーバー・コンプライアンス(過剰規則)

つまり、分析をやりすぎ、計画策定ばかりを何度も練り直し、さまざまなルールや規則で組織を縛る。これらが日本企業から行動力、実行力を奪い、組織のダイナミズムの喪失を招いた。

経営管理において大事なのは「計画を練ること」ではない。「事実に基づく議論」 である。

「不正が行われる理由」は明白

試験不正が発覚したダイハツで調査に当たった第三者委員会は、「『現地現物』がなかったのが大きな原因」と指摘した。

トヨタでは、現地を訪れて実際にものを確認してから物事を判断するという「現地現物」という言葉が、創業時から大切にされてきた。

しかし、その思想はダイハツでは十分に浸透していなかった。 第三者委員会の報告書には、次のようなことが記載されている。

「管理職が多忙で、現場の業務や実情を理解する余裕がなかった」
「相談にいっても『どうするんだ』『間に合うのか』と詰問されるだけで、親身になってくれない」


 現場があえて不正や不適切なことに手を染めてしまうのは、目の前にこなさなければならない業務が山積みなのに、それを処理する能力が著しく不足しているからである。

もちろん、だからといって不正や不適切なことは許されない。業務が適切にこなせないのであれば、そうした声を上層部に上げ、善処してもらうのが筋である。

しかし、上から強烈なプレッシャーを受ければ、現場は声を上げられなくなる

現場の管理者は「できない」とは言えなくなってしまい、「なんとかします」と答えてしまう。負荷と能力に閾値を超える差異が生じれば、当然、通常の対応ではこなせなくなってしまう。

そして何か問題が起きると、再発防止のために「新たな規則やルール」がつくられる。そして、現場はそれを守ることを要求される。

いったん規則やルールをつくれば、それらは固定化し、守るべきものがどんどん積み上がっていく。規則やルールが自動的になくなることはない。

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