コマツはここまでやる! 中国建機市場トップへの執念
理由はまず、銀行や取引先などから信頼を得やすいため。もう一つは「生産から経営までデータがすべて透明化され、経営改善の指導がしやすくなる」(野路國夫社長)からだ。自社から技術人材を経営幹部として送り込み、約3年かけてみっちりと「利益の出る経営」を教え込む。地場の部材を使い原価低減したい企業には、コマツが自社の研究室で品質を確認した部材を紹介する。
中国進出の外資企業にとって今いちばん頭が痛いのが労務費の高騰だ。コマツは4月、現地進出の主要サプライヤーに4割もの賃上げを促した。コスト増の部分は、部材売価への転嫁を認めた。この意図を野路社長は「賃金という企業倫理にかかわる問題にきっちり対処することで、賃上げデモのような経営リスクを回避できる。ただこれは協力企業だけではできないから、支援が必要だった」と説明する。
コマツと同業他社の間には、決定的な違いがある。それは建機の心臓部であるエンジンと油圧部品を自社で内製化していることだ。コマツとキャタピラー以外は、日中韓いずれのメーカーも川崎重工業やいすゞ自動車、米カミンズから基幹部品を購入しており、供給網が経営のボトルネックになる。対してコマツは、基幹部品そのものは自前投資で、増産局面でも機動力がある。中国工場の組み立てラインもマザー工場である大阪のラインより高い生産ピッチを誇る。
自社の体制に抜かりがないだけに、基幹部品以外の残る6割の部品を供給するサプライヤーの力量が大きな経営課題なのだ。また基幹部品は全量、日本からの輸出で、円高のマイナス影響を免れない。この影響を穴埋めする原価低減をサプライヤーに努力してもらう必要がある。
コマツでは、中国を含むサプライヤーの経営データを半期に1度、役員会でレビューする。営業利益率が低い企業は3%以上に達するように指導を強化し、どうしても経営改善が難しければ取引価格を上げる。だが10%を超える企業には、逆に値下げなど利益還元を求める。