一方で、中国のシステムが根本的難題に直面した場合、その唯一の反応は、鎮圧である。それはこれまでのところうまく機能してきたかもしれないが、歴史上どの独裁国家も、鎮圧が秩序と発展の保証にもはや十分ではないことを知っている。もし中国が広範囲にわたる国民の不満に直面したなら、どうなるか予想がつかない。竜はつまづく可能性があるが、ゾウは左右に揺れながら歩き続ける。
さらに、中国の能力主義についてのベルの認識は楽観的すぎるだろう。中国のシステムが極めて官僚的で、出世の道は徐々にしか上れないことを考えると、若くて比較的経験は浅いが行動的で人を奮い立たせる指導者、たとえば米国の大統領バラク・オバマのような指導者の出現は不可能である。中国はフランクリンD.ルーズベルトやアブラハム・リンカーンのような若い頃に失敗した才能ある人を指導者に選ぼうとはしないだろう。
独裁主義の決定的な弱点
ベルは中国だけでなく、シンガポールと台湾のような独裁体制の成功についても言及している。だがこれらの国々はおそらく、独裁主義でなかったとしても、同程度に成功していただろう。成長と発展を促進するために両国の指導者たちが採った手段は、民主主義の原則と一致している。東アジアのかつての独裁国家の多くは、その経済的発展を妨げることなく、民主主義へ難なく移行した。
ベルの見解には単純な観察によって反論できる。すなわち、民主主義的な権利を獲得した人々で、独裁政治に戻ることを求める人々はいない。民主主義は強みであって弱点ではないことを証明するには、それだけで十分なはずだ。
中国のシステムは急速な経済成長を可能にしたかもしれない。だが「完全な合意」への依存は、予測可能な環境でしか正常に機能しない。対して、インドのシステムはたった一点のみの合意があれば機能する。すなわち、異議を唱える方法に誰もが合意する限り、必ずしも全員が合意する必要はないのだ。このことは変わりやすい世界において、インドに紛れもない、そして価値ある強みを与えている。
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