食品企業の放射能対策、主要35社アンケート--多くの企業が政府まかせ、後ろ向きの情報公開
全品目調査しネットで公開 安全策徹底する生協
検査結果の数値を公表しているのは、パルシステム生活協同組合連合会と生活クラブ事業連合生活協同組合連合会(以下、生活クラブ)のみ。両生協ともに、放射線測定への取り組みの長さは筋金入りだ。チェルノブイリ事故以降、「放射能汚染測定室」を開設、継続的に検査を行っており、測定ノウハウもある。
生活クラブでは「政府の大まかな検査では納得できない」と、9月からは全600品目にわたる全品検査を開始、検査結果を汚染度別(5段階)に分けてホームページ上で発表していく。
「チェルノブイリ事故当時のスウェーデン、ドイツなどでは規制値が徐々に厳しくなった。今後は市民団体やNGOの基準を調べていき、独自の基準値を設定していきたい」(石井明・業務副部長)としてさらなる強化策も検討する。
国が定めた暫定規制値1キログラム当たり2000ベクレルは、他国と比較して高すぎるという指摘も多い。チェルノブイリ事故後のドイツでは、幼児は同4ベクレル、成人でも同8ベクレルとしている。放射線防護の専門家である日本大学の野口邦和専任講師は「外部被曝、内部被曝ともにゼロに限りなく近くするのが基本中の基本」と訴えるが、企業の姿勢を見ると、その基本がいかに難しいかがわかる。
「今は政府と企業のなれ合いで消費者不在」と、消費生活アドバイザーの村山らむね氏は指摘する。「放射性物質を避ける・減らす・排出するの3点を念頭に、消費者自身が小まめに食品情報を収集するしかない」と村山氏は提言する。
アンケート結果を見ても、多くの企業が消費者ではなく業界と政府だけを考えていることがわかる。内部被曝の健康影響はまだわからない部分が多い。食品企業は消費者の口に入るものを提供している以上、積極的な対策と適切な情報公開を打ち出すべきだが、望み薄なのが現状だ。