食品企業の放射能対策、主要35社アンケート--多くの企業が政府まかせ、後ろ向きの情報公開

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これを受け厚生労働省は8月24日に食品の抜き打ち調査の開始を発表したほど。放射能問題に対する政府の姿勢を、国民の多くが信用していないのは明らかなはず。行政頼みで食品の安全を担保できないのは、消費者にとって常識になりつつある。

一方、25社が「検査を実施している」と答えたが、内容には大きなバラツキがある。小売業界は取扱品目が多いという事情もあり、「実施している」と答えた3社2団体のうち、セブン&アイ・ホールディングスイオンが測定している品目は、牛肉だけ。

スーパーは、総菜など自社である程度管理が可能な商品もあるが「材料が多くいちいち原産地を気にしていたらきりがない」(首都圏に展開する食品スーパー)と対策に消極的だ。であるならば、自分たちもよくわからないものを消費者に提供していることになる。

検査機器に関しては、誤差が少なく、含有される核種まで特定可能なゲルマニウム半導体検出器を導入している企業が多かった。シンチレーションサーベイカウンターやサーベイメーターは簡易検査用で、核種の特定などが難しい機器だ。

(3)の調達先の変更には、不二家の「行政による出荷制限や出荷自粛の対象となった地域の原材料は使用していない」に代表される回答がほとんど。ここでも、行政の検査頼みの企業姿勢が見られる。
 
政府には「特になし」 沈黙貫く食品業界

消費者からの原産地や製造年月日を問う電話やメールは、多い企業で月400件程度。企業は消費者の不安を肌で感じているはずだが、政府への要望については、「特になし」(ヤクルト)、「一企業であり、国の方針に対して意見を申し上げる立場にない」(森永乳業)と沈黙を貫く企業が18社もあった。

要望書を提出している生協を除くと民間企業ではゼンショーのみが「国の暫定規制値を安全基準にしている企業は、お客様から信頼されないのが現状。国際的に最も厳しい基準に照らし、全国民が納得する規制値を設けてほしい」と国の基準の改善を注文している。

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