復興へ民間資金を活用する、ソーシャル・バンクを早急に創設、導入せよ
福島県いわき市久之浜町。東京電力福島第一原子力発電所から約31キロメートルにある海辺の町だ。津波とそれに伴う火災による死者は63人。全壊した家屋も多い。さらに、原発事故で多くの住民が地域外に避難してしまった。人口6000足らずの町にとって、この犠牲と被害はあまりにも大きい。
8月27日、地元の若者たちが犠牲者の鎮魂と復興祈願のための「奉奠祭(ほうてんさい)花火大会」を開催した。セブン&アイ・ホールディングス、三菱UFJニコス、三井住友銀行、セブン銀行など大企業が費用の多くを賄った。東京の金融関係者が地元の要望を聞きつけ、スポンサー探しを行った。花火の打ち上げは復興に向けた地域住民の努力と大企業による支援の輪が融合した瞬間だった。
花火大会は趣向が変わっていた。福島県各地からやってきた子どもたちが壇上で心の丈を叫ぶ。と、それに呼応して花火が打ち上がる。原発事故で全村避難という過酷な状況に置かれた飯舘村の小学生はこう声を張り上げた。
「早く、村に帰りたいです」
天空に華麗な大輪の花が開いた。観客の中には涙する人もいた。
二律背反を打破する
花火大会は、集まった8000人の復興への思いの中で終了した。しかし、被災地の厳しい状況は今後も続く。何よりも、国の復興政策は予算の確保すらあやふやなままだ。政府の台所が困難に直面していることは言うまでもなく、予算確保が容易ではないことも理解できる。しかし、それにしても、この5カ月の政策論議はあまりにも稚拙だった。