復興へ民間資金を活用する、ソーシャル・バンクを早急に創設、導入せよ

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 SIB発行に際しては、再犯率低下など、多岐にわたる項目が計数的に目標化され、それと発行条件に満足した民間投資家たちが投資する。目標が達成された場合、償還時の元利金償還は財政が負担する。達成に失敗した場合は投資家負担だが、それまでの間、事業状況に投資家による厳しいチェックが伴うことは言うまでもない。

これによって、財政悪化局面での財政出動が回避でき、プログラムが成功すれば、社会コストの増大が回避できる。所得税など税収キャッシュフロー増にも寄与する。投資家は投資の果実が得られ、失敗すれば、自己責任という資本市場のルールが貫徹される。

このSIB発行にかかわる金融機関は、ソーシャル・バンクといわれる投資銀行である。SIB発行は投資銀行としてのビジネスであり、それによって彼らの報酬が賄われる。

問われる政治と官と金融の質

東日本大震災発生後の状況を振り返ると、個人・企業による寄付金、義援金などが各被災地に寄せられる一方で、肝心な復興政策は、財源を増税で賄うか否かの議論が繰り返されるだけで一向に実施へと向かっていない。目を覆いたくなるような状況である。なぜ、民間の資金やスキームを積極的に取り入れようという発想が出てこないのか。

これは、財政悪化で積極的な財政出動に腰が砕けている一方、復興目的の補正予算編成の場面では各省庁が予算の分捕り合戦に熱心、という状況と無縁ではないだろう。要するに、政策には及び腰でも、自分たちへの予算割り当てが少なくなる事態は阻止したい、そして、その懸念のある民間資金の活用などはやりたくない、という官僚特有の発想だ。

多くの日本人にとって、ソーシャル・バンクとかSIBなどという言葉は、あまり聞き慣れないかもしれない。

しかし、それは単なる表現の問題にすぎないのではないか。なぜなら、わが国では、戦後復興から高度経済成長の局面において、日本興業銀行(興銀、現在はみずほフィナンシャルグループに統合)という特異な金融機関がそれに近い役割を担っていたからだ。

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