復興へ民間資金を活用する、ソーシャル・バンクを早急に創設、導入せよ
わが国は財政セクターが資金不足にある一方で、民間セクターは大幅な資金余剰にある。まして被災地域では、復興政策が具体化しないことによる預金者の生活防衛意識が根強く、国による義援金、東電からの仮払い補償金、地震保険の保険料などが金融機関に流れ込んで大幅な預金超過状態が形成されている。財政の深刻な資金不足のみならず、民間セクターの極端な資金余剰もマクロ経済的には重大な問題だ。
だぶついた資金をいかに活用して具体的な復興につなげていくのか。その一つの手段として、ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)の導入を提唱したい。
SIBは、英国で編み出された。近年、欧州を中心に活動が活発化しているソーシャル・ファイナンスの一手段である。ソーシャル・ファイナンスとは、経済的な利益のみならず、社会面、倫理面などの利益を追求する金融手法のことだ。
SIBは、文字どおり債券発行による資金調達である。財政状況が著しく悪化し、経済・社会政策への投資を集中的に財政に負担させることが困難化した中で考案された。投資への社会的要請と財政悪化の深刻化という二律背反する状況をブレークスルーするアイデアである。
具体的なプログラムが動きだしたのは2010年秋。短期刑の服役を終えた受刑者とその家族の生活支援活動の一環としてSIBが発行された。生活支援は、具体的には、仕事の斡旋、地域社会への融合等々である。受刑者が出所しても職を得られず、地域社会から孤立しがちとなって再び犯罪へと走り、刑務所に舞い戻るケースは少なくない。
その悪循環を解消すれば社会的コストの増大が回避できる。しかし、その仕組みを公的メカニズムだけで支えると財政が一段と悪化し、ほかの社会政策にシワ寄せが及びかねない。そこで資本市場を通じて民間から資金を調達し、支援活動プログラムを支える。その手段がSIBだ。