首相は、自民党の裏金事件で深まった国民の政治不信を払拭するために、強い決意で「派閥解散」を表明したはずだ。
それなのに、唯一派閥を存続させている麻生氏と麻生派に協力を乞う首相の姿は国民にどう映るか。岸田首相への不信感をいっそう募らせることは間違いない。岸田首相は、そうした国民の「視線」を感じ取れないようだ。
岸田自民党が犯した3つの過ち
裏金事件をめぐって、岸田自民党は3つの過ちを犯した。
第一に衆参の約90人の国会議員が、非課税の政治資金として少なくとも約6億円の裏金を受け取っていたこと。民間企業ではコンプライアンス(法令順守)が強化され、不明朗な経理は厳しくチェックされる。そうした状況下での裏金の発覚に、納税者の怒りが噴出した。
第二に、事件の真相解明に後ろ向きだった点だ。衆参両院の政治倫理審査会に出席した安倍派幹部らは、裏金の経緯について「知らない」「秘書や会計責任者に任せていた」と繰り返した。岸田首相は、安倍派に今も影響力のある森喜朗元首相に電話で事情を聴いたが、おざなりのやり取りで、事実関係は明らかにならなかった。政治家たちの「逃げの姿勢」に、多くの国民はあきれ果てた。
第三に、自民党が再発防止策として打ち出した政治資金規正法改正案が抜け穴だらけで、事件への反省が感じられない点だ。「政党の裏金」とも指摘される党から幹事長らに支給されてきた政策活動費について、自民党は当初、支給の項目だけを公表する案をまとめていた。
日本維新の会の要求を受け入れて「10年後に領収書を公開」することになったが、時効の関係で10年後には贈収賄や脱税が問えない可能性があり、資金透明化の実効性が疑われている。企業・団体献金の見直しに触れられていないことにも、世論調査では不満が多い。
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