どん底期の2007年、サントリー洋酒事業部(現ウイスキー部)へ配属されたのが奈良匠ウイスキー部長だった。当時はビールが1日100杯出る居酒屋でも「ウイスキーは月に1~2杯しか売れなかった」(奈良氏)ほどの厳しさだった。
ところが、2008年に入ると、徐々に現場の変化が報告されるようになる。営業担当者から「ビールの度数に近いハイボールがよく飲まれている居酒屋がある」との情報が入るようになったのだ。
そんなとき、ウイスキーが苦手な社員が放った言葉がヒントになった。「ウイスキーをジョッキで、ビール感覚で飲んでもらうのはどうですか」。当時、業界にウイスキーをジョッキで飲む発想はなかった。ハイボールの可能性を感じていた奈良部長も「これならいけるんじゃないか」と開発に取り組むことになる。
新たなハイボールを売るために、サントリーが立てた戦略はこうだ。まずはレシピ。使用するブランドは「角瓶」とし、ターゲットを若年層に絞った。ウイスキーが濃くなりすぎないよう、作り方も明確に手順を決めた。ジョッキにレモンを搾り、山盛りの氷を入れる。ウイスキー1に対し、よく冷えた炭酸水を4の割合で注ぐ。これを「角ハイボール」とした。
小さな居酒屋から少しずつ流行を作った
次はどこで売るかだ。サントリーは当時から若者に人気だった銀座コリドー街の立ち飲み屋「丸吟」を、角ハイのモデル店に選んだ。
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