余震(アフターショック) そして中間層がいなくなる ロバート・B・ライシュ著/雨宮寛、今井章子訳 ~所得格差の拡大が政治の右傾化を招く
民主党のクリントン政権の下で労働長官を務めたこともある著者が、先に書いた『暴走する資本主義』に次いで、アメリカ経済の矛盾にメスを入れたのがこの本である。
先の『暴走する資本主義』では、アメリカ経済で消費者と投資家の力が異常に強くなっていることがアメリカ資本主義を暴走させたのだとしていたが、今度の本では、富裕層と中間所得層の格差が拡大したことがアメリカ経済を困難な状態に陥れているのだと主張している。
ウォール街の銀行家たちは政府からの巨額の資金で救済されたにもかかわらず、巨額の報酬を得ている。
それに対して中間層の所得は減り、そのうえ住宅ローンなどで借金が急増している。そのため中間層が消費を抑えるからアメリカの景気はいつまでたってもよくならない、という。
著者によると、これまでのアメリカ経済は大きく三つの段階に分けられるという。第一期は1870年から1929年までで、所得と富の上方への集中が高まった時期、第二期は47年から75年で、格差が縮小し、繁栄をみなで共有した時期、そして第三期は80年から2010年で、繁栄が上層に集中していた時期である。
そこで、これから第四期に入って、所得格差の歪みを是正することが必要であるという。
所得格差の拡大に対するアメリカ国民の不満は高まっており、このまま放置しておけば、アメリカの政治が右傾化するだろう、と警告している。