「海水温上昇」で日本の周りだけ魚が獲れないなぜ 世界では水産業が成長産業になっている現実

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全国でさまざまな魚が減って報道される際、表現によって伝わり方が変わってしまうのはとても残念なことです。魚が減った理由について「海水温上昇や獲りすぎが原因」という表現では「海水温上昇」に主に原因があると取られてしまいます。同様に「外国漁船の影響や獲りすぎが原因」という表現でも同様に「外国漁船」のほうに意識がいってしまいます。

これを「獲りすぎに加え、海水温上昇・外国船の漁獲なども影響」という表現にすることで、社会は「獲りすぎ」という本質的な原因に目が行くことになります。是非心がけていただきたいです。

なぜ日本の周りだけ魚が減っていくのか

最初に「外国船の影響」について例を挙げてその理由を説明します。このグラフは瀬戸内海(愛媛県)と日本全体の漁獲量の推移を比較したものです。瀬戸内海で中国や韓国の漁船は操業していませんが、日本全体と同じように漁獲量が減少していることがわかります。

次に「海水温上昇」と漁業への影響の説明です。気象庁の図は世界の海の海水温の変化を示しています。よく、海水温が3度上がった、5度上がったなどと聞くことがありますが、それは表面の海水温の変化のことです。

(出所)気象庁

日本の海が含まれる海水温の変化は、海面の水温でも図の通り、100年で0.6度の上昇となっています。つまり100年で1度未満という、ゆっくりとしたペースで海水温は上昇しているのです。言うまでもなく、日本の海の周りだけ海水温が上昇しているわけではありません。

しかしながら、なぜ日本の周りだけ魚が減っていくのか。その違いが資源管理の違いなのです。「日本と外国は違う」といったことではまったくないのです

筆者には、拙稿やYouTubeをご覧になったマスコミ関係者をはじめ、さまざまな分野の方からの問い合わせが増えています。

このままでは、資源管理に有効な手段がまだ取られていないので、魚が減っていく社会問題はさらに深刻になっていきます。

片野 歩 Fisk Japan CEO

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かたの・あゆむ / Ayumu Katano

早稲田大学卒。Youtube「おさかな研究所」発信。2022年東洋経済オンラインでニューウェーブ賞受賞。2015年水産物の持続可能性(サスティナビリティー)を議論する国際会議シーフードサミットで日本人初の最優秀賞を政策提言(Advocacy)部門で受賞。長年北欧を主体とした水産物の買付業務に携わる。特に世界第2位の輸出国であるノルウェーには、20年以上毎年訪問を続けてきた。著書に『日本の水産資源管理』(慶應義塾大学出版会)、『日本の漁業が崩壊する本当の理由』他。

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