「海水温上昇」で日本の周りだけ魚が獲れないなぜ 世界では水産業が成長産業になっている現実
科学的根拠に基づき、漁業者や漁船ごとに実際に漁獲できる数量より大幅に少ない漁獲枠が割り当てられています。このため価値が低い小さな魚や、脂がのっていない、おいしくない時期の魚は、自ら獲らないようになる制度なのです。これを個別割当制度(IQ、ITQ、IVQ)などと呼び、譲渡性の有無などによりいくつかのパターンがありますが、乱獲を防ぐという意味で基本は同じです。
わが国でも個別割当制度(IQ)の適用が、2020年の漁業法改正もあり、ようやく増えはじめました。ただし、実際に漁獲できる数量より割当が大きかったり、漁獲されている魚が小さかったりなど、まだまだ運用面での大きな課題があります。また漁業者の方に、世界の漁業で良好な結果を出し続けていて、自身のためにもなる個別割当制度の内容がまだ正しく伝わっていないことは大きな問題です。海外と日本は違うといったことでは、全然ありません。
世界で水産業は紛れもない「成長産業」
次のグラフは世界全体(赤の折れ線グラフ)と日本(同・青)の生産量を比較したグラフです。世界全体では1980年代の1億トンから2倍に増加して現在は2億トンになっていて増え続けています。対照的に、同時期に日本は同1200万トンから400万トンと3分の1に激減して、さらに減り続けて悪化が止まる気配はありません。
このように、世界と日本の傾向を比較すると「何故これほどまでに違うのか?」という大きな疑問がわくはずです。わが国では青い折れ線グラフのほうしか学校で取り上げないため、水産業は魚が獲れず、後継者もいない厳しい一次産業と習ってしまいます。しかしながら、実際には世界人口と水産物の需要増加を背景に、紛れもない「成長産業」なのです。
社会科の先生がこういった客観的な事実を知る機会がないまま、授業をしていることで、教えられた子供にも水産業に対する誤解が広がり、国民全体が誤解してしまっているのです。
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