ジャカルタ鉄道新線「日本支援で建設」決定の裏側 JICA現地事務所長に聞く「東西線プロジェクト」

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われわれも、いや個人的には、MRTJはJR東日本や東京メトロの知見が集約されているような事業体なので、そこがやってくれると非常にいいんじゃないかなという思いがあった。DKI知事代行のヘル氏はジョコ大統領に比較的近いという理解もあるので、知事代行の動きで一気に実施体制が固まるかなと。

昨年(2023年)の今ごろの頭痛の種は実施体制が決まらないということだった。実施体制が決まらないとL/A調印に持っていけない。そこでDKIと話をして、抵抗しているのは運輸省鉄道総局(DGR)であるということで運輸大臣のブディ氏もサポートしてくれることになり、大臣がゴーサインを出して進めることになった。

ただ、DGRが審査時の合意議事録についても最後まで抵抗して、その中で運輸大臣は署名式をやろうと(2023年11月)。審査のドキュメントの署名式なんて普通はやらないのだが。その後もいろいろあり、正式要請が出てここに至ったという感じだ。

合意議事録署名式 ジャカルタ東西線プロジェクト
2023年11月11日の合意議事録署名式の様子(写真提供:JICA)

運輸省が抵抗した理由は

<筆者解説>ジャカルタMRTプロジェクトの実施体制は、南北線着工時にも長らくの間議論され、なかなか決着がつかなかったという経緯がある。本来、円借款は政府間契約で、政府機関が実施するプロジェクトを対象とするものである。地方自治体(この場合はDKI)は供与の対象としては異例である。よって、借款の負担方法や返済方法などをめぐり、政府とDKIの間の折衝に時間を要した。

しかし、旧態依然とした組織で満足な管理・運営能力があるとは必ずしも言えない運輸省や国鉄(KAI)には任せられないという事情もあり、MRTプロジェクトの実施機関は政府機関ではなく、DKIの下部機関として設置されたMRTJ社となった。日本側から見ても、運輸省が実施機関となればインドネシア国産品の使用や、EN(欧州規格)をはじめとする運輸省の規格を要求される可能性が高く、本望ではなかった。

一方、運輸省は本来自らの利権になり得たMRTプロジェクトをDKIに取られてしまう形となった。そこで、東西線では路線がDKIの外にまたがることを盾に、積年の恨みを晴らさんとしていたわけだ。2022年頃には、東西線の第一期区間がDKI内のウジュンメンテンから隣接する西ジャワ州のメダンサトリアまで、当初予定より1駅伸びるという不可思議な動きすら発生した。

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