ジャカルタ鉄道新線「日本支援で建設」決定の裏側 JICA現地事務所長に聞く「東西線プロジェクト」
東西線の事業準備調査(F/S)は2010年末に契約され、最終報告書は2013年に提出されているが、巨額の資金を必要とするためインドネシア政府は一時期国家戦略プロジェクトの優先対象から外し、PPP方式も模索していた。2015年に「ジャカルタ都市高速鉄道整備事業(E/S)(フェーズ1)」として19億1900万円を限度とする借款が結ばれ、基本設計と入札補助が行われたものの、その先の道のりは長かった。
そもそも、当時は本体着工時に日本の技術を用いることができるかどうかすらわからなかった。だからこそ、今回のL/A調印には関係者一同がほっと胸をなでおろしたことだろう。
今回の調印に至るまでの間、一体その裏側では何が起きていたのか。この数年来、L/A調印実現に向けてインドネシア政府、そして世界の開発ドナーとの調整に奔走してきたJICAインドネシア事務所長の安井毅裕氏にインタビュー取材を行った。東西線プロジェクトのこれまでとこれから、そして、そこから見えてきたものとは――。
抵抗勢力は「運輸省鉄道総局」
――東西線のL/A調印、ようやく決まったかというのが正直な感想です。そして、現状の南北線と同様の実施体制で建設が決まり安心しました。大変長い交渉の時間を要したと思います。
安井:E/S借款が結ばれたのが2015年で、インドネシア側での予算承認が遅れたり、コンサルタントを選定するにあたっての調達委員会の設置が遅れたりということもあり、コンサルタントが決まったのが2020年だった。それで少し遅れてしまったというのがある。ただ、その後は比較的大きな遅れはなかった。実施体制を検討するところは検討していたが、それほど大きな遅れというわけではない。
――実施体制は、コンサル契約が終わった後に決めるのですね。
安井:2020年くらいから始まった。東西線はDKIを出るので、州営企業であるMRTJ(ジャカルタ地下鉄公社)は今の法令だと州外の末端区間ができないということで、どういった体制が適当かということを決めるためのサポートも行ってきた。しかし、結局誰も決められないという状態が続いて、2023年後半くらいから、DKIのほうからMRTJにやらせたいという話が出てきた。
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