霜降り明星・粗品の毒舌に覚える「嫌悪感の正体」 アンチコメントが殺到している「3つの理由」

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藤本さんに至っては本人だけでなく、自らが所属する吉本興業の方針を否定し、業績にも悪影響を与えかねない発言でした。その意味で世間のビジネスパーソンから見たら、「裏切りや告発に近い行為」という感覚があるのかもしれません。

世間の人々をまるで「俺の笑いが理解できない弱者」とみなすような「情弱」と斬り捨てたことも含め、攻撃する相手が増えれば風当たりが強くなるのは当然でしょう。

「時代に合わない笑い」の押し付け

粗品さんに対する風当たりが強くなった3つ目の理由は、時代に合わない笑いを押し付けられるような感覚。

粗品さんと言えば、「M-1グランプリ」(ABC・テレビ朝日系)と「R-1グランプリ」(カンテレ・フジテレビ系)の王者であり、笑いの実績は芸人の中でもトップクラスでしょう。ただ、そもそも笑いはあくまで受け手となる“笑う側”がいてこそ成立するものだけに、「これがコント」「これが面白い」などと“笑わせる側”が一方的に押し付けることは難しいところがあります。

“笑う側”の私たちにしてみれば、「誰かを落として笑いを取る」という芸を以前ほど無防備に楽しめない時代になりました。個人の尊重が叫ばれる世の中になって、「少しでもいじめや差別のニュアンスを感じると笑えない」「2人の間に多少の信頼関係や愛情が見えないと安心して笑えない」などと感じてしまう。

そんな対人関係にセンシティブな人が増える中、「気持ちよく見られないコントを押し付けられている」という感覚になってしまうのではないでしょうか。

たとえば、テレビ局が求めるコア層(13~49歳)の人気番組となった「千鳥の鬼レンチャン」(フジテレビ系)は、出演者のほとんどを千鳥やかまいたちが強烈にイジっていますが、「本人がそれを望んでいる様子が伝わり、安心して笑える」というニュアンスがあります。

もちろん話芸としての技術力も必要ですが、粗品さんの「1人賛否」からはそのようなニュアンスを感じづらくなっているのでしょう。

以前から粗品さんは毒舌やギャンブルの遊び方などから昭和の芸人を引き合いに出されることが何度かありました。横山やすしさんやビートたけしさんと比べられたこともありましたが、2人がそんな姿を見せていた1970・1980年代とは時代が大きく変わっています。

また、2人は世間の人々に茶目っ気や弱さを見せるなどのキャラクターが愛されていましたが、粗品さんにはそんな良い意味での“スキ”があまりないことも風当たりが強くなっている背景の1つでしょう。

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