「成瀬あかり」は現実のM–1でどこまで通用するか M-1創設者が驚愕する「成瀬本」の深いM–1描写

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実はぼくと成瀬にはM–1以外にも縁がありすぎて驚いている。

ぼくは滋賀の出身である。そして、成瀬が通う膳所(ぜぜ)高校のライバルである彦根東高校の出身で、成瀬と同じ京大を出ている。成瀬が夏祭りで踊った江州(ごうしゅう)音頭を聴くと体が自然に踊り出す(これはけっこうほんと)。

他府県から電車あるいは車で滋賀に帰ってきて車窓から琵琶湖が見えてきたときには、なんとも言えないうれしさと安堵を感じる滋賀県人だ。夜、紫色に光る西武大津店の姿を初めて見たときには、どういうわけか誇らしく感じたものだ。滋賀出身の堤康次郎(つつみ・やすじろう)が創業した西武グループが初めて滋賀につくった西武百貨店だからか。

成瀬のおかげで、ぼくのふるさと、滋賀が今熱い。

滋賀を舞台にした『成瀬は天下を取りにいく』は「2024年本屋大賞」をはじめ、なんとこれまでに15冠獲得した。おかげで滋賀が(ちなみに関西人は「滋賀」という単語のアクセントのせいで「滋賀が」と言いにくいので、大体みな「滋賀県が」と言う)、琵琶湖が、西武大津店が、琵琶湖の観光船ミシガンが、そして膳所が注目を浴びている。こんなに注目を浴びるのは滋賀県の長い歴史の中でも、大津京時代と戦国時代、そして桜田門外の変以来である。

今年のM–1への「成瀬」たちの出場が楽しみ

このようにぼくとM–1に非常に関係の深い『成瀬は天下を取りにいく』であるが、この本を読んでM–1に挑戦する人がさらに増えたらうれしい。そして漫才のおもしろさ、楽しさをたくさんの人に知ってもらえたら尚うれしい。

今年もいよいよM–1グランプリが始まる。8月1日には予選1回戦がスタートする。

「成瀬」の影響で、今年は全国から例年以上にたくさんのアマチュアが参加してくるかもしれない。もしかして、本物の成瀬も参加して、見事1回戦を突破するかもしれない。そう思うと今からワクワクする。

   
谷 良一 元吉本興業ホールディングス取締役

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たに りょういち / Ryoichi Tani

1956年滋賀県生まれ。京都大学文学部卒業後、81年吉本興業入社。間寛平などのマネージャー、「なんばグランド花月」などの劇場プロデューサー・支配人、テレビ番組プロデューサーを経て、2001年漫才コンテスト「M-1グランプリ」を創設。10年まで同イベントのプロデューサーを務める。よしもとファンダンゴ社長、よしもとクリエイティブ・エージェンシー専務、よしもとデベロップメンツ社長を経て、16年吉本興業ホールディングス取締役。20年退任。大阪文学学校で小説修業、あやめ池美術研究所で絵の修業を始めるかたわら、奈良市の公益社団法人で奈良の観光客誘致に携わる。23年、雑誌『お笑いファン』で谷河良一名義で小説家デビュー。

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