暦本:僕は水耕栽培に凝っていたことがあるんです。パクチーとかクレソンとかバジルとか、日当たりさえ良ければすごい勢いで育つんですよ。完全に一家庭の消費量を上回るぐらい採れるから、毎日のようにジェノベーゼをつくるような感じでした。
穀物は育てるのが大変なんだけど、ああいう葉物は繁殖力がすごい。光合成の威力に圧倒された。
落合:穀物は保存が利くから買い置きでいいけど、そういう葉物こそ新鮮なものが欲しいですよね。
葉物野菜はウーバーから産地直送
暦本:そうそう。もうちょっと技術が進んだら、葉物はスーパーで買わずに「自然」からの産地直送になるのかな。
落合:それが当たり前になったときに、人間はその松阪牛やパクチーを「自然」と感じるか、それとも人工環境でつくられた「人工物」と感じるか。裏庭でニワトリが産んだタマゴで目玉焼きをつくったら、「自然」の素材を料理した感覚になるじゃないですか。
ウーバーイーツが持ってきたタマゴをそれと同じように違和感なく受け取れるようになるまで、あと何年ぐらいかかりますかね。僕はいまでも違和感なく、それを「自然」として受け取りますけど。外に取りに行くのも、ウーバーイーツの人が持ってきてくれるのも一緒じゃないですか。
何を「自然」と感じるかどうかは距離の問題で、そこには時間の距離、空間の距離、あとは意味の距離もあると思うけど、インターネットから来る物体との距離は自分が足を使って八百屋に行く距離より心理的に近いような気がするんですよ。
そう感じた瞬間に、「自然」に近づくので。コンビニがはさまるとみんな「自然」じゃないと思うかもしれない。ウーバーイーツの場合、一風堂のラーメンは一風堂から来ていると思っているから。
暦本:たしかに。ならば松阪牛は牧場、パクチーは畑から来たと思える。
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