ニューオータニ「400年の歴史」持つ絶品の鴨料理 昭和天皇も口にした一品から辿るホテルの歴史
ホテルニューオータニが開業したのは、1964年9月1日のこと。創業者は大谷米太郎氏だ。
その3男である米一氏は、米太郎氏から社長業を引き継いだ後、インターナショナルレストランの先駆的存在でもある「トレーダーヴィックス 東京」をホテル内に開業させた。
そんななか、米一氏は飛行機のなかで偶然、トゥールダルジャンの2代目オーナーのクロード・テライユ氏と出会うこととなる。米一氏はもともとフランスのアートコレクターであり、フランス文化に関心を抱いていたことから、2人の会話は大いに弾んだようだ。
2人はホテルニューオータニ内でトゥールダルジャンの開業を計画するものの、今から40年前の日本で本格的なグランメゾンを開業すること自体容易ではない。そこでキーパーソンとなったのが、クロード氏と既知の仲であり、現在トゥールダルジャン日本代表総支配人を務めるクリスチャン・ボラー氏だ。
「25歳のときに、日本でオープンするレストランをみてくれないかと打診されました。飲食業界のことはわかりませんでしたが、料理やワインは大好きでした。まだ日本語はできませんでしたが、日本に非常に興味をもっていました。当初は2年間の滞在という話だったので、日本とフランスの懸け橋になれたらと思い、受けることにしました」(ボラー氏)
フランスの名店であるトゥールダルジャンで初の海外支店を開業することになり、ボラー氏は1年間クロード氏のそばで学んだ。
本店と同じ味の再現に試行錯誤
天皇陛下も召し上がったグランメゾンであり、クロード氏と米一氏の想いにも応えなければならない、さまざまなプレッシャーもあった。
開業の際に大きな問題になったのが、メインの食材である“鴨”である。当時は冷凍の鴨を輸入して使用するケースが一般的だったが、これでは本店と同じ味を再現するのは難しい。そのため、いくらコストがかかったとしても、鴨は冷凍せずに、空輸で運ぶことにした。
鴨のナンバリングについても議論があった。本店では19世紀末から料理で使用した鴨に番号を付けるというアイデアが評判を呼んだ。先に述べたように1921年6月21日には、皇太子であった昭和天皇が本店の鴨を召し上がったこともある。そのときの番号は“53211”だった。
東京の支店で1番からナンバリングしてしまうと、いつか天皇陛下と同じ番号になってしまう。特別な番号であるため、東京では天皇陛下が召し上がった鴨の番号の「次の番号」から、ナンバリングを始めることになった。
こうしてボラー氏の大きな尽力もあり、ホテル20周年となる、1984年にトゥールダルジャン 東京をオープンさせた。
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