メキシコ大統領選中に「93人も殺害された」なぜ カルテルの跋扈が政治にも影を落としている

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それどころか、カルテルの影響力は次第に拡大しており、カルテルはメキシコのみならず、ラテンアメリカ各国で勢力を増している状況だ。

また彼らの素業を調査して暴くジャーナリストは文字どおり命がけで報道業務に取り組まねばならない。報道や表現の自由などに取り組む国際組織「アーティクル19」の調べによると、メキシコで2000年から今年4月までに殺害されたジャーナリストは164人に上る。

ちなみに、これはあくまで死体が見つかったジャーナリストの数である。行方不明となっているジャーナリストも一般の市民と同様に多くいる。 例えば2006年から2023年までの行方不明者はおよそ1万5000人に達する。

新大統領下でも犯罪を減らすのは困難か

新大統領に選出されたシェインバウム氏も犯罪件数削減は使命として背負っているが、実際に減らすことは難しいと認識しているのではないか。

むしろ、同氏の焦点はオブラドール大統領の意思を継いで憲法を改正し、最高裁の裁判官を有権者が投票で選ぶようにするということで、それによって公平な裁判制度ができると考えているようだ。つまり、有権者を説得して、政府が望む裁判官を法廷に送り込みたい狙いがある。

だが、これが実現すると司法の中立性が失われるおそれがある。これでは犯罪を撲滅することは難しいだろう。

白石 和幸 貿易コンサルタント

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しらいし かずゆき / Kazuyuki Shiraishi

1951年生まれ、広島市出身。スペイン・バレンシア在住40年。商社設立を経て貿易コンサルタントに転身。国際政治外交研究も手掛ける。著書に『1万km離れて観た日本』(文芸社)。

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