メキシコ大統領選中に「93人も殺害された」なぜ カルテルの跋扈が政治にも影を落としている

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警察や軍隊に取り締まりを要請しても、警察官や軍人も犯罪組織と癒着していることが多い。また、警官などは安月給のため、犯罪組織に協力して手数料をもらうということもある。

そのため、ゆすりや誘拐事件があっても、被害者の家族や関係者はまず自らで解決の手段を見つけようとする傾向にある。犯罪の通報を受けた警官が犯罪組織に関係しているかもしれないからだ。それでもらちが開かない場合、仕方なく警察に助けを求めることになる。

また、犯罪者だとして逮捕されても、証拠不十分で釈放される場合が往々にしてある。犯罪証拠を集めるのが難しいためだ。犯罪を起こしても逮捕されることがないとわかっていることもあり、犯罪者は究極行為に及んでしまうこともある。

1日120人以上が殺害されている状況

メキシコがアメリカと国境を接している以上、そして、麻薬のアメリカへの密輸が続く限り、今後もカルテル、ギャングと、政治家、警察、軍人、判事らとの癒着は続く。しかも、カルテルとギャング間の縄張り争いからメキシコが解放されるとは見通しにくく、犯罪行為はこれからも続くとみるしかない。

例えば、現在のロペス・オブラドール氏が大統領に就任した2018年から2023年までに殺害された人数は以下の通りである。

毎日120人前後がオブラドール政権中に殺害されており、これは異常でしかない。しかし、メキシコではそれがもう日常の出来事として定着しているのだ。これを撲滅させるにはカルテルを消滅させる以外にない。それは現実には不可能に近い。

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