北朝鮮の金正恩氏にはやはり息子がいないのか 韓国・文在寅前大統領の回顧録からみる家族構成

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

つまり、北朝鮮の核・ミサイルは「後の世代を守る」ためのものであるとした。この「後の世代」の「アイコン」として「ジュエ」が登場したのであった。

4年で正反対の姿勢に

金正恩党総書記は2018年春には「後の世代まで核を持たせたくない」と言っていたが、4年後の2022年秋には「核が後の世代を守る」と180度反対になってしまった。

その原因は2019年2月のハノイでの2回目の米朝首脳会談が完全な決裂に終わったことであろう。

すべてを自分の思いのままにする唯一的領導体系という個人独裁を確立した金正恩党総書記は、ハノイの米朝首脳会談の失敗で人生最大の挫折を味わった。それは最高指導者の権威を失墜させかねないものであった。

北朝鮮は寧辺の核施設を廃棄する代わりに、2017年に決議された国連の経済制裁の解除を要求した。アメリカは大量破壊兵器の全面的な廃棄が実現すれば制裁解除ができるとリビア方式のビッグディールを要求した。

米朝双方が予備交渉を十分にせず、両権力者が自身の交渉能力を過信していた結果、会談は「ノーディール」に終わった。もし、ハノイ会談で部分的な合意でもできており、米朝交渉が続いていれば、北朝鮮の非核化への姿勢がここまで正反対にはならなかっただろう。

北朝鮮はハノイの「ノーディール」以降、外交や核政策だけでなく、経済政策でも「自力更生」を掲げ、2019年12月の党中央委第7期第5回総会で「正面突破戦」を掲げた。これ以降、北朝鮮は社会主義路線への復帰を強めていった。

北朝鮮の核・ミサイル政策について、まずは北朝鮮自身の誤りを指摘しなければならないが、国際社会もまた、なぜ北朝鮮が、とりわけ、最高指導者の金正恩党総書記が「後の世代まで核を持たせたくない」という考えから、「核が後の世代を守る」へと正反対の考えになったのかは考えてみる必要があるように思う。

金正恩党総書記のアメリカや韓国に対する非核化への発言を「北朝鮮の常套的なうそ」「非核化などする気もないのに差し出した戦術的な工作」などと批判することはたやすい。

だが、そうした発想は、北朝鮮とのいかなる合意も無意味だという結論になるしかなく、外交は意味を失う。

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事