【ムーディーズが日本国債格下げ・格付け担当者に聞く】政権が安定しないと、経済成長や財政再建の実現は困難だ
--小泉政権下では景気が回復し、財政再建も進んだと指摘しているが、これは世界的なバブルによる輸出の拡大を背景にしていた。そのような状況は今後望みにくく、日本は国内の改革を考えなければならないのではないか。
そう思う。
内閣府から7月に中長期的な財政見通しが公表された。成長シナリオの場合で名目GDP成長率は15年で約3%、20年で3.9%となる。この前提には全要素生産性が上がるということが大きな要因となっている。
また、世界的な景気が好循環となること、具体的にはリーマンショックの前の07年、08年のような状況になることを想定しているが、これは今年も来年も無理だと思う。成長は抑え込まれるだろう。
--低成長・デフレだから日本の財政は悪化している。一方で、低成長・デフレだから国内の貯蓄率が高く、投資家が国債を選好している。この均衡が崩れて「ある時点で」リファイナンスリスクが高まる可能性を指摘しているが、「ある時点」とはいつ頃か。
中期的な仮説だ。格付けの見通し(「安定的」)が慣行上の対象としている12~18カ月の間に起こることはなく、18カ月を過ぎても、すぐには起こらないと思っている。
とはいえ、いずれ貯蓄率がマイナスに転じ、経常黒字も縮小に転じるということがあれば、そしてそれが続くとすれば、国債の巨額なリファイナンスニーズをまかなえなくなる。
ただ、そういうリスクはすぐに高まるとは考えていない。これは、日本政府の債務残高の対GDP比率が非常に高いにもかかわらず、ワンノッチのみの引き下げとしてAa格にとどめ、見通しを安定的とした理由でもある。
--ムーディーズは、イタリアやスペインについては格下げ前の日本と同じAa2で格下げ方向で見直し中としている。これらは債務残高の対GDP比では日本ほど悪くないが(イタリアは120%、スペインは70%)、調達環境が不安定であることが、格付け上はマイナスに働いているということか。
ユーロ圏の財務危機であらわになったのはまさにそういうことだ。調達を非居住者に依存している。これは格付け上の大きなリスク要因だと考えている。