【ムーディーズが日本国債格下げ・格付け担当者に聞く】政権が安定しないと、経済成長や財政再建の実現は困難だ

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(2)3月11日の東日本大震災とその後の福島第一原子力発電所の事故が、2009年の世界的景気後退からの日本経済の回復を遅らせ、デフレを悪化させていること。

(3)日本の中期的な潜在成長率が極めて低く、このことが赤字削減目標の達成と、「社会保障と税の一体改革成案」の実施を一層困難にしていること。

一方で、格付けの見通しを「安定的」とした理由は、

(1)日本の国内投資家の国内投資志向・国債選好により、財政赤字を補填する資金を世界でどの先進国よりも低い名目金利で調達しうること。

(2)強固な対外支払いポジションにより、世界の信用市場からのショックを免れていること。構造的な経常黒字に加え、対GDP比50%を上回る対外純資産は先進国中最大でドイツの2倍である。

(3)2011年度・12年度に多額の財政赤字が発生しても、調達コストの優位性は持続すると予想されること。

である。
 
 将来の格付けアクションにつながる要因は以下のようなものである。

格付け見通しがポジティブとなり、格上げにつながる要因としては、(1)財政再建目標達成に向けた着実な進展、(2)景気低迷からの力強く持続的な回復が上げられる。

格付け見通しがネガティブへの変更、あるいは格下げにつながる要因としては、(1)社会保障と税の一体改革の実施の遅れ、(2)世界景気後退の長引く影響と3月の震災と原発事故の継続的な影響から経済が回復できない場合、(3)国債市場での国内投資志向の弱まり、あるいは日本の対外ポジションの大幅な悪化である。そうなれば、ある時点で市場が政府債務のリスクプレミアムを価格に織り込み始め、年間の多額のリファイナンスニーズを賄うコストが大幅に上昇すると見られる。

■インタビュー

--日本の潜在成長率は震災後、一段と下がったということか。

内閣府は日本の潜在成長率を0.7~0.8%としている。これは震災前から変わっていない。ただ、電力供給の制約でさらに下がることはありうる。IMFも1%を若干下回るとしており、見方は一致していると思う。

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