②は、ネット上で権利侵害の情報が広がった場合に加害者を特定して損害賠償請求等を行うためには、第三者であるプロバイダ等に対して必票な情報の開示を請求することができる権利が必要であるため、その権利を新たに作った、というものです。
③は、発信者情報開示請求権に基づき裁判の審理を簡易迅速に行うことができるようにするため2021年の改正で創設された、新たな裁判手続(非訟手続)です。
今回の改正で何が変わる?
では今回の改正で何が変わるのでしょうか。
ネットの誹謗中傷は、匿名掲示板、SNS等の大規模なプラットフォームを中心に行われています。ネットの誹謗中傷を防止するために、今回の改正で、匿名掲示板、SNS等の大規模プラットフォーム事業者に対する規制が追加されることになりました。
大規模プラットフォーム事業者に課されることになった規制は複数あるのですが、ネットの誹謗中傷をされたときに直接影響してくる規制を抜粋して、概要を説明します。
②侵害情報に関する調査の実施
③送信防止措置(≒削除)の申出者に対する通知
④送信防止措置の実施に関する基準等の公表
現状、誹謗中傷をされた人がその情報削除を求めようとしても、削除対応窓口がサイト上のどこにあるかよくわからない、というケースが多いですが、①により、削除対応窓口がわかりやすくなることが期待できます。
また、現状、誹謗中傷された人が削除対応窓口を見つけて削除依頼をしても、調査結果通知が来ない(または時間がかかる)というケースは、②および③により、自分の削除依頼につき調査がされ、その結果が通知されることが期待できます。もし削除されない場合であっても、削除しないという通知が早くに来れば、弁護士に相談する等、次のアクションを早く取ることができます。
そして、大規模プラットフォーム事業者が送信防止措置(≒削除)を取ることができるのは、原則として、事前に公表している削除基準等に従う場合となりますが、④により削除基準があらかじめ公表されることによって、問題とする投稿が削除基準に該当するか、判断をしやすくなることが期待できます。
5月22日に暴露系インフルエンサーの滝沢ガレソ氏がXで男性歌手に関する投稿をし、この投稿が短時間のうちに広く拡散され、その数時間後、アミューズが、滝沢ガレソ氏の投稿に関連して同社所属の星野源さんの名前を挙げての臆測が拡散されていることにつき声明を発表する、ということがありました。
影響力の大きいインフルエンサーの投稿や話題になっている投稿は、それらを閲覧したユーザーが引用して投稿することが多く、その結果加速度的に投稿内容が拡散していきます。
投稿の対象となるのは、著名人や芸能人だけではなく一般の方であることも多いですが、投稿対象となった方自身が同じ土俵(SNS等)で反論すると、より投稿内容が拡散する(炎上する)結果となる可能性があります。最初に行うべき対応として、「大規模プラットフォーム事業者への削除申出」を頭の片隅にとめておきましょう。
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